今回、日大選手が反則行為を仕掛けた関学選手のポジションはクォーターバック(QB)だが、これは重要な意味を持つ。QBはアメフトにおける攻撃の要だ。アメフトの攻撃には数多くのフォーメーションがあり、次の攻撃でどのフォーメーションでいくかを決めるのは基本的にはコーチだが、他のプレイヤーに伝えるほか、状況によってはフォーメーションを自分で決めることもQBの重要な役目だ。

 プレーは、センターと呼ばれる選手がQBにボールをパスするところから始まる。そのタイミングを取るのもQBの仕事で、ボールを受けたQBはフォーメーション通りに、あるいはその時の状況に合わせて、他の選手にパスを出すパスプレーか、走り込んできた自軍の選手にボールを手渡し(ハンドオフ)によるランプレーを行い、ボールを前に進める。言ってみれば、攻撃のすべてを差配するのがQBの仕事で、だから「司令塔」と称される。チームの攻撃力はQBの力量にかかっていると言っても過言ではない。だからこそ、今回の日大選手の反則行為は悪質なのだ。

 反則した日大選手は、QBを狙い撃ちしている。最初の反則では先発出場のQBに違反タックルし負傷欠場させ、次には交代したQBに対してもさらに違反タックルを繰り返している。QBを潰せば攻撃力が激減することは明らかで、だから狙ったわけだが、その行為はあまりに卑劣だ。

 それがどれくらい卑劣かについても、感覚的によく分からない人も多いと思う。これは、たとえば野球で言えば、相手チームのエースピッチャーが打席に立った時に敬遠で歩かせ、一塁ベースに向かっているピッチャーの後ろから、後頭部をめがけて思いっきりボールを投げてぶつけ、負傷退場させるような行為だ。高校野球でもプロ野球でも、このような行為があれば、投げた選手の即刻退場はもちろん、試合自体も即座に没収だろう。それくらい、あり得ない行為なのだ。

 どのようなスポーツにも、絶対にやってはいけない行為がある。反則技があたりまえのプロレスにさえ、そのような行為はある。たとえば、相手の顔面をキックするという行為は、あまりに危険で禁止されている。昔、前田日明選手が試合中に長州力選手の顔面に蹴りを入れた事件があった。これは大きな問題となり、前田選手は団体を解雇処分された。格闘技のような危険な競技だからこそ、やってはいけない行為というものがあるのだ。