地震に強い家か、断熱性が高く快適に過ごせるか、使いやすい間取りや設備かなど、戸建てのチェックポイントは多い。分譲住宅マーケティングコンサルタントの松沢博氏と2物件を歩いてみた。

地盤改良のための杭打ち。ここでは木材を使った、自然に還る環境パイル工法を採用

地盤対策をしている
ということ自体が大事

 JR武蔵野線「吉川美南」は、「越谷レイクタウン」以来4年ぶりにできた同線の新駅(本年3月開業)で、周辺では住宅や公共施設の建設が相次いでいる。この日たずねたのは全87戸の大型分譲地「オランジェ吉川美南」と、全19戸の中規模分譲地「Ville de KIZUNA吉川」の2物件だ。

 松沢氏は、戸建てのチェックポイントは大きく五つあるという。第1に、震災後関心が高まった「建物の構造、地盤」だ。

「建築中の現場なら、地盤改良の内容も見られます。わからなくても説明してもらい、地盤対策していることを確認する、そこがまず、重要です」(松沢氏)

基礎工事は建物にとって非常に重要な段階。設計図に従い、鉄筋を配置していく(配筋)。このあとコンクリートを流し込んだときに鉄筋がずれないよう、結んでいる(写真上)。コンクリートを流す作業(打設)の前に、必ず検査が入る。写真上は建材を覆う養生シート(右下)。コンクリートの基礎まで、透明なシートで覆って養生してあった(左下)

雨の日、風の日に
現場を訪れたい

 この日はあいにくの雨だったが、「こういう日に来ると、現場の仕事ぶりがわかる」と松沢氏。

 たとえばこの現場では、建材をブルーの養生シートで覆い、濡れないようにしていた。また、コンクリートの基礎部分も透明フィルムでガードしていた。こうしたていねいな作業かどうかは、天気が悪いほうがわかる。

 構造は大事だからじっくり見たいし、「特に木と木を接続する金物は強度の元になるので注目」というが、素人目には、何が何だかよくわからない。

「理解できなくてもいい。何をしているかを聞き、建築確認書や構造計算書、地盤調査書などを見せてもらう。そのステップが重要なのです」(松沢氏)

 チェックすべきは、進んで情報公開する姿勢があるか、現場の職人が整理整頓して、いい仕事をする姿勢があるかだ。

断熱材もいろいろな種類がある。厚みがある断熱材を隙間なく屋根裏まで張り巡らせていると断熱効果が高い

入居後の満足を
左右する要素とは

 松沢氏が挙げる第2のチェックポイントは、「遮音性、断熱性、収納」。新築を購入した人の満足度調査をみると、ポイントが高いのは「キッチン、リビング、バスルーム」。低いのは「遮音性、断熱性、収納」だという。

「つまり、こうした満足度の低いポイントは見落としがちで、入居後に気づくことが多いのです。そこを、買う前に調べておくことが大事」(松沢氏)

 たとえば遮音性については、二階でドンと跳ねたときに重量衝撃音がある。これは、木造である限り、絶対に付いて回る。これを防ぐには、マンションのスラブ構造のように、間に空間をつくる必要があるのだが、現実にはかなり難しい。

 外からの音であれば、窓が遮音性を持った複層ガラスであるかを見る。最近はトップランナー基準による省エネ仕様になっている家が多いが、それなら遮音性も高いと考えてよい。

 収納は全体の量と、押し入れに布団が入るかなど機能性を見る。断熱性は、断熱材がどのように入っているかを見る。左上の写真のように屋根裏までびっしり断熱材で覆われた家は、当然、断熱効果も高くなる。

※外壁や窓が「次世代省エネルギー基準(平成11年省エネルギー基準)」を満たすとともに、冷暖房設備や給湯設備のエネルギー消費量を、平成20年度時点での一般的な設備のエネルギー消費量に比べて、10%程度削減するもの。