電子顕微鏡で見たはしかウイルスはしかは甘く見ると危険な伝染病だ。はしかウイルスの電子顕微鏡の写真 Photo:Science Photo Library/AFLO

はしかの症例数がじわじわ増えている。年初からの累積報告数は5月21日までに、170例を超えた(国立感染症研究所集計など)。日本は1978年にはしかの予防接種が定期接種となってから、就学前の乳幼児を対象に予防接種が行われてきた。その結果、2015年には土着のはしかウイルスが存在しない「排除状態」にあるとWHO(世界保健機関)に認定されている。しかし、その後も毎年のように「輸入感染」による感染例が報告されているのが現状だ。(医学ライター 井手ゆきえ)

海外からの「輸入感染」
国内で二次、三次感染が拡大

 今回の流行の発端となった沖縄県の患者数は、5月22日までに100名に達した(軽症で非典型的なはしかの例、調査中症例を含む)。最初の感染源は台湾から渡航した30代の男性観光客で、沖縄県内を旅行中にはしかを発症。この間に男性と接触した県内の住民が2次感染し、さらにそこから3次感染が広がっている。

 沖縄県以外では、集団感染が報告され始めた時期に同県を訪れた名古屋市の10代の男性が帰宅後に発症し、感染源となった。現在、感染例が報告されている地域は、沖縄県、福岡県、大阪府、愛知県、東京都など12都道府県にのぼる。

 検出ウイルス株から推定される感染地域は国内のほか、タイ、インド、ネパール、バングラディシュ、フィリピンなどで、複数の国からウイルスが持ち込まれていることがわかる。

1回接種では免疫不十分の可能性
ワクチン接種回数の確認を

 はしかウイルスは感染力が強く、免疫がない人が感染すると、ほぼ100%発症する。くしゃみや咳による飛沫感染、接触感染のほか、空気感染と様々な経路で感染するため、手洗い、マスク装着だけで予防することは難しい。