笑うと奥歯の銀歯がキラリ――。せっかくの美男美女でも“残念な印象”を与える場合があり、事実、劣等感を抱く人も少なくない。虫歯などの治療で「かぶせ物」をした場合、従来の保険治療では銀歯以外に選択肢がなかった。ところが、現在は保険治療でも「白い歯」が可能になっている。ただし、それには「条件」がある。(歯科医師・歯学博士・日本歯科総合研究所代表取締役社長 森下真紀)
コンピューター制御による
歯の「白い修復物」が保険適用に
CAD/CAM(キャドキャム)とは、Computer aided design/Computer aided manufactureの略であり、コンピューターでデザインし、コンピューターを利用して製作される物の総称である。1980年代半ば、医療先進国であるドイツにおいて、歯科治療におけるCAD/CAMシステムの応用が実現化した。
コンピューター制御により歯の修復物(詰め物やかぶせ物)を設計・製作するこの技術は、当時の歯科業界において極めて先進的かつ革新的なものであった。
これまで、口腔内に装着される修復物は、そのほとんどが、歯科技工士の手作業によって一つひとつ製作されてきた。そのため、歯科技工士の技量やセンス、経験値によって修復物の形態や強度、審美性にばらつきが見られた。
しかし、歯科用CAD/CAMシステムでは、その製作工程(設計や加工)がコンピューターによって置き換えられるため、ばらつきのない均一な品質の修復物を製作することができるようになった。そして何より、CAD/CAMシステムが歯科治療にもたらした最大のメリットは、歯が削られてから修復物が入り、元通りにかめるようになるまでの「治療期間の短縮」であった。
従来、歯の修復物を作るためには、まず修復物を入れる歯(患部)を粘土でかたどりし、それを鋳型として利用し、歯科技工士が手作業により修復物を製作し、最終的に修復物が口腔内に装着されるまでにはどんなに早くても数日間は要した。