在社時間と休息時間確保の
枠組みに合わせ社員の行動が変化

 労使間交渉では、データが必要になる。そこで、人事部では実態を把握するため、全従業員の出退勤の状況を調べた。その結果、圧倒的多数の人は勤務間インターバルが8時間以上、取れていることがわかった。しかも、取れていない人は繁忙期という一時的だったこともわかった。

 また、この作業からは別の気づきも得られた。「総労務時間数が多いわけではないのですが、11時間のインターバルが取れていない社員が1ヵ月20~30人いるとわかりました。部署にかかわらず、管理職・非管理職も関係ありませんでした」(人事部・茂木さん)

 このため、長時間労働による心身の不調を懸念し、安全衛生管理規程で全社員を対象に「11時間のインターバルが取れていない人は健康状態のセルフチェック、および、必要に応じて産業医の面談を受けてもらう」とした。

 労働組合側は、前述の「インターバル時間の根拠」「全組合員の休息時間確保状況の実態データ」に加えて、「社員の時間外にかかるコストと制度導入によるコスト削減案」などを打ち出した。

 こうして、労使間で議論し尽くした結果、「段階的な普及を前提に」勤務間インターバル制度の導入が決定した。当初は社内全体に告知することに力を入れ、半年後から勤務間インターバルが短い社員と上司には警告を出すようにした。自動的に警告が出る仕組みにはなっていないので、担当者が手作業でデータを抽出し、警告を出しているという。

 また、社内ルールとして安全衛生管理規程に沿った形で「法律に基づく各事業場の安全衛生委員会において、社員の勤務間インターバルの状況を調査審議事項として扱うこと」と決めた。このことで、労使双方が一体となって、休息時間確保に向けて対処できるようになった。

 導入後は、事前に懸念を示していた悪影響はほとんど見られず、導入はスムーズに進んでいるという。勤務間インターバル制度の導入に加えて、現在では「パソコンの電源を落としたら、30分以内には会社のビルを退館する」「全員が20時には退館する」という規定も設定した。

 勤務間インターバル制度の導入だけでなく、これらのルールが併用されたことで社員の行動が変わっていったという。

「新しいルールを導入するときは、どうしても一定の割合で反対する人はいます。実態を把握し伝えることで、考え方を変えてもらうことはできます」と茂木さんは言う。

 つまり、在社時間と休息時間の「枠組み」ができたことによって、社員は自分の仕事と生活と向き合うようになったわけだ。