「学校と地域の共通したビジョンづくりでは、地域資源を生かす学びを入れ、全国から越境留学する生徒を募集して多様性を学校に創出しようとしましたが、見たこともない取り組みに不安や抵抗感が出ました。訳ありの生徒が来るんじゃないかという反発もありました。でも、生徒が地域の観光プランを考える“観光甲子園”で文部科学大臣賞を受賞するなどの成功体験を積み重ねていくことで、学校も変わっていけたと考えています」(岩本さん)

全国に「島前高校」のような
地域と学校が協働する取り組みは広がるか

 国や県ではなく、地域が主体となって高校を拠点に改革するという取り組みは、現在、全国各地にも広がっている。

 例えば、北海道南西部の日本海に浮かぶ奥尻島にある北海道奥尻高校は、2016年度より道立から町立の高校となり、島全体を学び舎と考えた様々なカリキュラムを実施している。遠征費などに課題を抱えていた部活については、クラウドファンディングを実施し、交流試合の遠征費を捻出したり、新たにマーケティングを中心とした活動を行う「マーケティング部(仮称)」を設立したりするなど、機動的な活動を行う。

 地域・教育魅力化プラットフォームでは、全国から生徒を募集している公立高校向けの留学支援事業である「地域みらい留学」を2018年から立ち上げたが、島前高校や奥尻高校のような成功は「奇跡だ」という声も少なくない。それを奇跡にしないためには、どのようなポイントが重要になってくるのか。

ブータン研修旅行島前高校では、シンガポールへの修学旅行だけでなく、希望する生徒はブータンへの研修旅行に参加することもできる

「1つは、学校が地域や社会に開かれていて、協働のチームがあること。あるいはコーディネーティブに動く人たちがいる体制があること。

 2つ目は、地域課題も教育資源として捉え、高校生がまちづくりや地域を舞台にしたプロジェクトに挑戦していける学習環境を構築していることでしょう。

 そして3つ目は、ほかの学校や地域ともコラボレーションしていくことです。今、様々な学校や地域で取り組みが進化していますので、それらを相互に学びあうことで地域の魅力も高まっていきます。つまり、自分たちでゼロから考えることにこだわるのではなくほかを参考にすることも大切ですし、ほかを知ることで自分たちの地域の魅力に気づくこともできます」(岩本さん)

 現在、廃校の危機にある学校に関しては“名物校長”のような存在を据えるような対策も考えられるが、それだけでは解決できないほど問題は深刻化している。地域が主体的に動いて地元の学校を改革できる体制づくり、そして短期的ではなく長期的な視野で地域の発展を考えられる人材を呼び込む土壌が、島前高校のようなモデルが広がっていくための前提条件になるのではないだろうか。

(ダイヤモンド・オンライン編集部 林恭子)