他人の顔色が気になる人、
自分を認められない人に聴いて欲しい

──なるほど、ではそうしたアドラー心理学への感想も踏まえて、どんな人に作品を聴いてほしいと思いますか?

「人生の指針になった」と朗読した声優が語るアドラーの教え

細谷 他人の顔色を気にしてしまう人ですね。10人中9人がAに賛成しているとき、自分はBだと思っていてもそれを言い出せないような人です。Bだと主張すれば相手の機嫌を損ねるんじゃないかと先回りして考えてしまう人はとても多いと思います。
 僕はいまの仕事をするなかで、常にベストの選択を自分ですべきだと思っています。でも、もしかしたらその選択が相手の機嫌を損ねるかもしれないし、それが原因で切れてしまう縁もあるかもしれない。けれど、それでも自分がこうだと思う道を進むべきなんです。先ほども言いましたが、『嫌われる勇気』ではそれを「課題の分離」という考え方で説明しています。他者の考えを操ることはできない。だったら自分がベストと信じることをやり続けるしかないじゃないかと。
 僕は去年、仕事を休ませていただいたんですけど、それ以前は他者の考えを気にする傾向が強かったんです。たとえば、ディレクターさんの「OK」に対して本当にそうなのかって疑ってしまう。そのまま受け入れたら「本当にOKだと思ってるの? 進歩がないぞ」って言われるんじゃないかと。だから他者の言うことに敏感で、他者の期待に応えられているかをすごく気にしていました。ところが『嫌われる勇気』に、それでは自分の人生の主役になれないと書いてあった。それは凄く印象的で、いまや自分にとっては背骨のような考え方になっています。だから、他者の顔色を気にしすぎて疲れている人にはぜひ聴いていただきたいです。自分らしく生きていくための方法とか言葉がいっぱい詰まっていますよ。

井上 僕としては自分で自分を認められない人に聴いて欲しいですね。自分をダメなやつだと卑下して、やりたいことをやらずに言い訳するのが癖になっている人って多いはずです。そういう人にぜひ届けたい。自分を認めるところから入って、人と競争しない、人と比べない、自分は自分だと気づいてもらいたい。そのうえで、自分の理想とする自分に向かって進んでいただければ嬉しいですね。

──では本作の聴きどころを教えてください。

細谷 やっぱり内容です。青年と哲人が何を語り、何を提案しているかをじっくりお聴きください。とくに僕が印象に残ったことは、人が自立するために教育はあり、他者の言葉もあるという教えです。僕はそれを今後の自分の生き方の指針にしようと決めました。それくらい非常に強い影響を受けたんです。皆さんにもそうした部分を共有していただければ本当に嬉しく思います。

井上 『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』に興味はあったけど、本を読むのはなぁっていう人はいると思います。まさに僕のことですけど(笑)。でも今回お仕事を頂いてから時間をかけて読ませていただき、本当にこの作品に出会えてよかったと思います。すごく生きるのが楽しくて楽になりました。とくに、人は誰でも対等であり、縦の関係ではなく横の関係を目指すべきだという考えは素晴らしいです。たくさんの方に触れて頂き、新たな気づきを得てもらいたいですね。読書が不得手な方は、まずは僕らの声で聴いて読んだ気になってもらい(笑)、できればあとから本を読んでいただきたいと思います。