日本では負のイメージ一色の徴兵制。しかし、今年に入ってフランスやスウェーデンといった国では、徴兵制復活論が出てきているという。世界的な徴兵制の現状と、徴兵制の意義などを、著作『徴兵制が日本を救う』(展転社)がある元陸将補、元防衛大学校教授で軍事評論家の柿谷勲夫氏に聞いた。(清談社 福田晃広)

多くの日本人が誤解している
徴兵制のイメージ

日本の自衛隊は志願制だが...北朝鮮や中国の脅威は当面続く一方、少子化で自衛隊志願者が減るのは確実。国防に携わる人が一定数いなければ、国民全員の安全が脅かされるのは確実だ

 広辞苑によると徴兵制とは「国民に兵役の義務を強制的に負わせる国民皆兵制度」のこと。日本では1873年(明治6年)、ヨーロッパを参考にして施行された。そして、1945年(昭和20年)の敗戦で日本軍そのものが消滅したために廃止となり、現在の自衛隊は志願制となっている。

 平成29年版の防衛白書は「主要国・地域」で、現在徴兵制を採用している代表例として、ロシア(徴兵+志願)、中国、北朝鮮、韓国、エジプト、イスラエルを挙げている。イギリス、アメリカ、フランス、イタリア、ドイツなどは、半世紀以上前から逐次、徴兵制から志願制に移行したが、最近になり、フランスやスウェーデンのように、横行するテロやロシアの拡張主義などを理由に徴兵制を復活させようという動きも見られるという。

 戦後の日本で徴兵制といえば、成年男性全員が兵役に服し、戦地に送り出されるというイメージを思い浮かべる人が多いだろうが、実態はそうではなかったと柿谷氏はいう。

「多くの人が誤解していると思われますが、戦前の徴兵検査では、甲種合格、第一乙種合格、第二乙種合格、丙種合格、丁種(不合格)に区分され、徴兵制だからといって、甲種、乙種合格者全員が現役兵として徴集されるわけではなく、抽選で徴集されました。平時であれば、合格者全員を徴集するほどの兵員は必要なく、実際に入営するのは合格者の半分以下だったのです」(柿谷氏、以下同)

 現役兵として徴集されなかった人は「在郷軍人会」という組織に入り、戦時や事変などで、兵力が不足した場合に召集された。大東亜戦争中、成人男性の多くが戦地に送り込まれたのは事実だが、戦中だからといって「誰も彼もが戦地に送り出された」というのは、事実に反しているのだ。