1970年代に世界経済を襲ったスタグフレーション。その危機が世界経済に再来するとの懸念が強まっている。それが現実のものとなるかどうかは別としても、伝統的な投資対象だけでなく、商品も対象に入れる備えが必要となりそうだ。個人投資家の場合、インフレ連動債というわけにはいかないが、金連動型ETF、金投資、商品ファンドなどの方法がある。
目覚ましい経済発展を遂げる新興国においてディマンドプル(需要牽引型)インフレが発生し、国際的な商品市況を上昇させ、先進国ではコストプッシュ(生産費押し上げ型)インフレが発生している。さらにサブプライム問題による金融市場混乱を受けて、欧米の中央銀行が流動性を供給し続けているため、再び商品市況に投機資金が流れ込む構図はいまだに続いている。
もっとも、それがために今の商品市況は過熱感が強い。どこかで調整する可能性がある。たとえば原油価格の場合、2006年7月に上昇がピークアウトした際、それは米中間選挙の選挙対策が背景という穿った見方が台頭した。その見方が正しいかどうかは判断が分かれるが、同選挙の3ヵ月後に調整は完了。再び騰勢を強めて現在に至っている。同じ理屈ならば、米大統領選挙がある2008年秋に原油価格はピークアウト、そして2009年あたりから再び上昇を始めることになるだろう。もちろん共和党政権が継続することも条件かもしれない。
一方で、サブプライム問題により米国経済が事実上リセッション(景気後退)局面に入ったとの見方が強まり、それがデカップリング論を押しのけて世界経済に蔓延するとの考え方がある。今後、世界経済が減速するとの向きが多いことは、5月に発表されたメリルリンチ機関投資家調査でも明らかだ。ならば新興国の旺盛な需要も減退し、インフレは収まる可能性が高まる。だが、そうとは言い切れない部分もあろう。
問題なのは穀物市況の高騰。食糧が手に入らなくなるかもしれないという恐怖が一度根づいてしまったら、解消するのは難しい。生命にかかわる話だけに食糧問題は切実である。食べ物の恨みは怖いのだ。場合によっては、前述の条件を無視してスタグフレーションに突入する恐れもぬぐえない。また、それではすまずにハイパーインフレを経て恐慌という事態も過去にはあった。現状はスタグフレーションとはいえないが、インフレヘッジを考えておく必要がある。
(株式市場問題研究家 大山 巖)