ただトランプ大統領の行動はなかなか見通せない。中国との関係で台湾問題を揺さぶるということも選択肢に入っていると思われる。

 議会で成立した台湾旅行法に基づき、閣僚レベルの訪問を実施するなどを通じて中国を牽制するのかもしれない。

 ただ中国が台湾問題で自制することも考えにくく、その場合には北朝鮮問題や貿易問題で米国に妥協するどころか、米中対立が一層激しくなるシナリオもなくはない。

 さらに欧州などとの貿易戦争の帰趨にも影響を受けざるを得ない。

 特に今後、米国が通商拡大法232条の国家安全保障条項を援用して、自動車に対する高関税を賦課するということになれば、日本も含め強い反発が起こるだろう。

 トランプ大統領の取引的手法が破綻し、歯止めなく貿易戦争が拡大し泥沼化すれば、世界経済への大きな悪影響は必至だ。これを阻止するため米国議会やメディア、有識者の賢明な行動を期待したい。

日本は立場を明確に
WTOでの問題解決を

 また日本を含む国際社会の反応も重要だ。欧州やカナダは、鉄鋼・アルミへの高関税実施に対し報復措置をとっている。日本は鉄鋼・アルミについては実害が少ないとはいえ、少なくとも自己の立場をより明確にするべきだ。

 80年代の日米貿易摩擦の際には、日本は通商法301条の発動のような一方的行動はWTO貿易ルールに反することをさまざまな場で繰り返し主張した。

 今回の米国の国家安全保障を理由とする貿易制限についても、国家安全保障の範囲が明確ではなく、貿易制限実施は慎重であるべきだし、ましてや自動車に対する国家安全保障を理由とした関税賦課が許されるものではない。

 トランプ大統領はWTOからの脱退を検討していると伝えられるが、中国の知的財産権保護問題や米国の301条発動がWTOの場で検討されるべきだという中国や欧州などの主張に対しても、日本は明確に支持を表明すべきだ。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)