放送法を問い直す

 放送法の第1条には「放送の不偏不党」という言葉があります。この「不偏不党」という言葉は、あらゆる論点でどの立場にもコミットをしてはいけない、という意味ではありません。メディアというものの特性を考えれば、それは不可能です。

 また、公職選挙法でも、「日本放送協会又は基幹放送事業者が行なう選挙に関する報道又は評論について放送法の規定に従い放送番組を編集する自由を妨げるものではない。ただし、虚偽の事項を放送し又は事実をゆがめて放送する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならない」と記されており、「公正」は求めているが「中立」を求めてはいません。

「公平」というのは、アクセス権をしっかりと確保すること。「公正」というのは透明性を確保するということです。

 現状、NHKの経営委員は衆参両院の同意を得て内閣総理大臣が任命することになっていたり、総務省が電波を管理していたりなど、マスメディアの忖度が起きやすい制度設計になっています。

 あるいは、制度とは別に、首相が選挙後のインタビューを拒否するようなことが起きると、メディアも政府与党の顔色を窺いがちになる。
 メディアが忖度や萎縮をすれば、「公正」かつ「公平」な報道は実現できません。その意味では、放送法改正を通じて、そもそも放送のあり方、報道のあり方をあらためて問い直していく必要があります。