価格が安くできるのは、膨大な売れ筋データを持つから
さて、第7回、第8回とアマゾンの商品がケタ違いに多い理由が、マーケットプレイスという仕組みにあることが十分わかったと思う。
出品事業者にとって、便利なことこの上ないのだ。
しかし、マーケットプレイスは、事業者にとって不利益がないのだろうか。
残念ながらそんなことはない。
そして、それこそが、アマゾンが「どこよりも安くできる」源泉にもなっている。
アマゾンの商品は安い。とにかく安い。
試しに価格ドットコムで何か商品を検索してみると、軒並みアマゾンが上位に並ぶ。
たとえば、日清のカップヌードル シーフードヌードル20個の商品を調べてみると2904円で、2位に比べて送料を含めると20%くらい安い(2018年7月時点)。
スーパーの安売りと比べてもケタ違いの安さを実現している。
元々、アマゾンは直販だけでも品揃えが多いので値下げに躊躇がない。これにマーケットプレイスで得た、出品業者のデータを足すのだ。
たとえば、ある出店企業がマーケットプレイスを利用して、アマゾンが自ら取り扱っていない商品を売り、それがヒットしたとしよう。
当然、支払いを管理しているアマゾンには販売履歴が筒抜けなので、アマゾンは売れ筋商品と判断する。アマゾンはその商品を仕入れ、直販で取り扱いを始めるだろう。
こうやって、アマゾンはどこよりも低価格で商品を提供できる。しかも、システムで機械的に判断できるから、アマゾンの仕入れ担当者はほぼ自動で手配を始めるだろう。
こうなってしまうと、中小企業は採算度外視の価格設定にせざるをえない。利益を確保するためにアマゾンから撤退したいと思っても、売上は落ち込む。
「まさかアマゾンのような大企業がそこまでやるか」と考える方もいるかもしれないが、アマゾンは米国で、こうした徹底した値下げ攻勢で結果的にライバルを潰してきた歴史がある。
マーケットプレイスは便利な一方、気づけばアマゾンに情報を吸い取られ、身動きできない状況に追い込まれる危険もあるのだ。
実際、アマゾンに自社の売れ筋商品を知らせたくないという判断でマーケットプレイスを敬遠する企業も存在する。