近年、会社内には「自分のやりたいこと」だけを主張する“モンスター部下”が急増中だ。彼らの登場によって、職場崩壊へのカウントダウンが始まっているというが、この問題の背景には、政府が推進する「キャリア教育」の弊害があるようだ。(取材・文/黒沢一樹、構成/清談社)

プライドばかりが高い部下を
量産するキャリア教育

プライドばかりが高い若手が増えています自分のやりたいことは曖昧なまま、親の望む有名企業への就職を志し、プライドばかり高い…そんな若手に手を焼く企業が増えています Photo:PIXTA

「最近の若者は仕事に対して『やる意味』を求めます。OJT(業務を通して行う職業教育)で仕事を教えても、意味が理解できなかったり、『やりたいこと』ではなかった時には、仕事を放棄することもあります」

 こう語るのは都内の人材紹介会社に勤務する男性だが、これはまさに今の時代を象徴する話といえるだろう。

 新卒として企業に入社しても、希望の部署に入れなければ退社をちらつかせ、コピー取りや掃除など雑務は「やりたいこと」ではないと文句を言う。さらに、本人にとっての「やりたくないこと」が続くことで、精神的に病んでしまう若者までいる。

 新社会人が最初の研修で学ぶであろう、「Will-Can-Mustの3つの輪」。これは、「仕事とはやるべきこと、やりたいこと、できることが重なり合うところで遂行するもの」とする考え方だが、今の若者は“やりたいこと”だけに前のめりになっているのだ。

 もちろん、そんな若者を「甘い」と切り捨てることは簡単だが、対応を誤れば職場崩壊の危機に発展しかねない。企業側とすれば、少しでもいい人材を採りたいと採用に時間や労力をかけており、新入社員も、苦労して就職活動を乗り切ったはず。その結末がこれでは、お互いにあまりにも不幸だ。