【事例解説】

全社員が必要に応じて
いつでも他部門のノウハウにアクセスできる
コーポレートユニバーシティの利点

 J:COMユニバーシティは、社員の知見や経験を大切に考え、研修の内製化というアプローチでそれらを教え合う文化が形成されている代表的なコーポレートユニバーシティです。

 理念教育については、10名の社内講師で積極的に研修が行われているとのことでしたが、そもそも理念教育とは、人材育成の根幹をなすものであり、我々は何者で、社会においてどんな貢献を果たそうとしているのかを学び、その過程のなかで、愛社精神を育んでいくものです。自社が大切にしている考えや価値観を理解することは、入社したばかりの社員や、またM&Aで新たに仲間になった社員にとって、会社に馴染む期間が短縮され、自社を深く理解することで愛社精神を高めるきっかけになります。

 これは、組織社会化を促すアプローチの1つでもあります。組織社会化とは、「個人がある組織の中に新しく加わる中で、組織目標を達成するために必要な知識・技術・価値観を獲得し、だんだんとその組織の一員になっていくプロセス」をいいます。

「J:COM愛」をベースにした教育が行われ、いつでも一致団結できる、J:COMの「仲間力」が根底にあることが、組織社会化へうまく作用していると考えます。このように理念教育をベースにした研修の内製化は、組織社会化を促しやすくし、教え合う文化を創る有効なアプローチであると考えます。

 一方、学部長制をベースにしたJ:COMユニバーシティの取り組みも大変魅力的です。各本部や各部門内に社員のノウハウを閉じ込めることなく、希望すれば全社員が必要に応じて、いつでも他部門のノウハウにアクセスできるようにするためのプラットフォームは、主体的に学習していく社員を育成するうえで、とても大切なことです。

 また、前述の取り組みについて、社員が、会社のこと、他部門のこと、自分が知らない多くの社員に対して、今まで以上に興味を持ち、自社に惚れ直すことを目指している視点は、研修の内製化の本質的な目的の1つであり、参考になります。

 これからのコーポレートユニバーシティは、経営戦略の実現のための位置付けであることは当然のことながら、業界内外の発展のために組織や顧客を結びつける「場」をより広範に提供し、持続可能な経営を行っていく上でのエコシステムを構築することが求められています。一企業としてだけでなく、より大きな地域経済との関係をも見据えているJ:COMユニバーシティの将来的な構想は、大変価値があると考えます。

 次回は、J:COMに根付く「育てる文化」がどのようにして創られているのかについて、新入社員における研修の内製化という観点からインタビューします。