日本の教育と世界の教育の違いでよく出てくるのが保護者の関わり方です。ある国は、学校を休ませて家庭で教育したり、ある国では親が仕事を辞めてまでこの教育にエネルギーを注ぎます。家庭での保護者のあり方を考えてみましょう。
46年間、教育一筋――都立中高一貫校合格者シェア52%で業界1位、都立高合格者数1位を獲得した東京都随一の学習塾「ena」の学院長である河端真一氏の最新刊『3万人を教えてわかった 頭のいい子は「習慣」で育つ』がいよいよ発売。結果を出すことで証明してきた、その教え方・学ばせ方は、まさに、最強にして最高の子育て論であり、塾教師としての立場でできることではなく、家庭にいる保護者ができることをまとめたのが本書です。
本連載では、子どもたちにとって貴重な時間を保護者としてどう接するか、保護者の対応次第で子は変わるということを実感していただき、今すぐできることを生活に取り入れてください。この夏休みからぜひ取り組んでほしいことを、本書から一部抜粋し、やさしく解説していきます。

保護者が関われば関わったぶんだけ
子どもの学力となって返ってくる

 子どもの教育における保護者の役割はどうあるべきか。理想は、保護者が教師になることだと思います。

『受験は母親が9割』(朝日新聞出版)などの著書がある佐藤亮子さん(佐藤ママ)という方がいます。元学校教師で、専業主婦として子どもの受験勉強をサポートし、4人の子ども全員を最難関である東大理3に合格させた実績を持つ方です。

 彼女の4人のお子さんが東大に合格できたのは、子どもたちがもともと頭がよかったからではありません。佐藤ママの努力のたまものです。

 佐藤ママの教育にかける情熱はものすごい。勉強方法はもちろん、スケジュールや生活習慣など、あらゆる面で子どもの勉強に関わります。夏期講習に行きたいと言う娘と口論になり、2日間、口を利かなかったというエピソードもあるくらい、徹底的に受験に口を出すお母さんです。

 子どもの教育において、佐藤ママのような関与の仕方も一つの理想でしょう。みんながみんな佐藤ママになったら、学習塾は不要になってしまうかもしれませんが……。

 佐藤ママは特殊な例のように思われるかもしれませんが、海外に目を向ければ、そうでもないということがわかります。

 よくいわれるのは、ユダヤ人の家庭教育です。ユダヤ人は子どもの教育に対して非常に熱心で、仕事を辞めてまで我が子の教育に関わる人も多いそうです。

 また、アメリカの一大宗派であり、米国民の約3割を占める「キリスト教福音派」の人たちも教育熱心であることが知られています。彼らの多くは、子どもを学校に通わせずに、保護者が家庭教師となって子どもに勉強を教える「ホームスクーリング」を取り入れています。

 なぜかというと、一般の学校に行かせると、聖書に反して「進化論」などの世俗的な教育を施されてしまうから。聖書の教義に沿った教育をするためには、自宅で学習させる必要があるのです。

 聖書の教えが正しいかどうかは別として、保護者が我が子に対して、自分の考えに合った教育を施すというのは、当然のことだと思います。

 このように、どの国でも教育熱心な人たちは、子どもの教育に徹底的に介入するのが普通です。

 とはいえ現実的には、保護者にも人生の目標があるし、仕事をして家計を支える必要もあります。それに中学受験の問題だってかなり難しいので、勉強を教えてあげたくてもできないかもしれません。そんなときは、塾・家庭教師を利用すればいいのです。

 ただ塾・家庭教師を利用するといっても、丸投げにして自分はノータッチではいけません。高いお金を払って塾に通わせても、任せきりでは十分な成果が得られないからです。

 保護者はプロデューサーになったつもりで、子どもの教育に携わってください。そのためには大前提として、すでに説明した通り、子どものことを知っておく必要があります

 たとえば塾に通わせるなら、その塾にはどんな特徴があり、どんな先生が教えているのか。何曜日に何の授業があり、宿題はどのようにこなすべきか。テストはいつ行われるのか。今子どもはどのくらいの成績で、次の目標は何か……などなど。

 受験が間近に迫ってきたら、保護者も受験生になったつもりで、積極的に受験に関わってあげてください。

 学校のパンフレットを集めたり、志望校を絞り込んだり、願書の提出をしたりするのはもちろん、受験当日は受験票などの持ち物を確認し、試験会場までついていくべきです。

 勉強を教えられなくても、それくらいのことならできるのではないでしょうか。

 ところが実際には、受験生の保護者であっても、子どものことをほとんど把握していない、サポートもしていない人がじつに多い。

 保護者と面談をすると、我が子が何年生なのか覚えていない方もいて驚かされることがあります。それでは教育を放棄しているのと同じです。

 保護者が教育面のリーダーとなって、子どものことを把握し、勉強をリードしてあげてください。

 保護者が関われば関わったぶんだけ子どもの学力となって返ってくるはずです。

【POINT】
子どものことをよく知り、子どもの教育に介入し、
保護者が教育面のリーダーとなる。

 次回、佐藤亮子先生との対談記事をお送りします。教育のプロたちが語る、勉強、受験、保護者(親)、今後の教育について、子どもたちの将来を左右するような内容となっています。乞うご期待!

<参考文献>
勉強ができる・できないは、遺伝や才能ではなく○○で決まる。