国語のテストで「失敗」の対義語は何か?と聞かれたら、皆さんは何と答えるでしょうか。当然のことながら、「成功」と書かなければ点数はもらえません。ところが、現実の世界では、ビジネスにかかわらず、「失敗」の反対は「成功」ではなく、「別の失敗」であることがとても多いものです。
小宮コンサルタンツ代表
ゴルフに例えて説明しましょう。真っ直ぐな球を打つためのスイングの基礎を学んでいない初心者が自己流でボールを打つと、右に飛ぶスライスになりがちです。少し上達してスライスの修正を意識して打つと、今後は左に飛ぶフックボールになる。どれだけ練習を積んでもボールは真っ直ぐに飛ばず、右へ飛んだり、左へ飛んだり。ゴルフの基本(原理原則)を学ばずに、スライスやフックボールを打つ失敗をいくら重ねても、真っ直ぐ打てるようにはなりません。
経営も同じです。先人の失敗を研究することで、失敗を避けることができる――そう考える経営者は少なくありません。そこで失敗談をまとめた書籍が数多く出版され、セミナーでも経験者が語る失敗談は聴衆の耳目を集めています。
もちろん、失敗、とくに自分の失敗から学べることはたくさんあります。同じ失敗を繰り返さないためです。しかし私の経験からすれば、失敗から学ぶより、成功するパターンをつかんだ方が確実で早いと思います。失敗の反対をやったからと言って必ずしもうまくいかない場合が少なくないからです。失敗の反対は「別の失敗」のことが多いのです。
経営の仕事を身に付けるには「正しい努力」が必要
これまで何度かお話ししてきたように、経営者の最大の仕事は「経営」です。経営とは次の3つです。
(1)「企業の方向付け」
(2)「資源の最適配分」
(3)「人を動かす」