「その店のオーナーには、商売にはストーリーが必要だと教わりました。お客様はストーリーに価値を感じてくださるので、その意味で300年以上の伝統ある会社とつきあえるのは嬉しいと言うのです。自分たちの価値を再認識する思いでした」

 当時は英語ができるスタッフさえいなかったので、スイス語で表示したラベルやパッケージをつくったり、EUの規制(原料や添加物など)を乗り越えたりする苦労もあったが、今ではスイスへもコンテナ1本分を輸出するまでになった。

 その後、思うように新規開拓が進まずやきもきしたが、それは信頼のおける現地商社が見つからなかったからだ。同社では国ごとに現地商社と代理店契約を結んでいるが、柴沼醤油の商品と伝統、考え方を共有するパートナーを慎重に選んでいる。

「商売を始める前に必ず土浦の蔵に来てもらって、歴史と製法を話し、理解してもらうようにしています」

現地を自分の目で見て
ニーズを知ることが大事

柴沼醤油醸造醤油醸造のための木桶。300年以上の伝統が根付く

 それにもまして重要なのは、現地を自分で知ることだ。柴沼は「現地商社より現地の店を知っているのが我々の強み」と語る。1軒1軒回り、嗜好やニーズや変化を実感することがなにより大事だと語る。

 その結果、国や地域ごとに醤油の味を変えてきた。たとえば、オーストラリアは甘め、フランスはさらに甘くし、アジアは塩味を強くするなど、20種類ほどバリエーションがある。

 こうして着実に輸出量は増え、さすがに柴沼1人では対応できなくなったので、英語ができる日本人や、最近では日本語やスペイン語もできるフランス人留学生を採用した。新人でも海外営業を任せるので、やる気のある若者が集まってくるという。そこで、海外事業部を切り離して、柴沼醤油インターナショナルを設立した。現在、5人の営業スタッフがいる。