「プーチン提案」は領土問題棚上げに等しい
共同経済活動はどういう意味を持つ?

 安倍首相はプーチン大統領との首脳会談の前には、常に北方領土問題で前進を図り、平和条約を早期に締結したいと繰り返す。ところが首脳会談が終わっても、どのように前進を見たのか説明はない。

 そればかりか、今回はプーチン大統領からは唐突に、他の首脳もいる会議の場で、年内に前提条件なく平和条約を結ぼうという提案が行われた。

 そのまま受け止めれば、北方領土の帰属を明確にして平和条約を結ぶという一貫した日本側の立場を大きく損ね、北方領土問題を事実上、棚上げしてしまうに等しい提案だ。

 これは、公然とした揺さぶりなのか、それとも従来の日本の立場を理解してこなかったのか。

 また今回の首脳会談では北方領土での「共同経済活動」について合意があったとされるが、共同経済活動がどのような法的フレームワークで行われるのか、それが北方領土問題の前進とどういう関係があるのかは不透明だ。

 共同経済活動の考え方は今に始まったものではない。従来は、ロシアの法制の下ではなく共同、あるいは特区的な仕組みを作ることにより、日本の施政権が排除されていない実績を作ることに意味があると考えられていた。

 だが果たして今回、合意された5分野の共同経済活動はどのような仕組みで実施されていくのだろうか。

 まさか法的立場を留保しただけで、ロシアの法律に従って実施していくということではあるまい。日本の利害を損ねないための、どの様な工夫がされているのだろうか。

 漁業などでは、日本の法的立場を害するものではないという留保付きで協力金を払い北方領土周辺の漁場で操業してきたが、これは日本の漁民の漁獲への強い要望があるからだ。そうした強い要望が5分野の共同経済活動について日本側にあるのだろうか。

 共同経済活動を共同の主権の下で実施するような枠組みが作られれば別だが、ロシアの主権下で経済活動を行うとすれば、それは北方領土問題との関係では後退だ。日本側に一体、どういうメリットがあるのだろう。

活発化する極東でのロシアの軍事展開
経済協力推進を急ぐのはなぜか

 日ロの間で政府間交渉に一向に進展が見られないばかりか、一方で、近年はロシアの極東地区や北方領土での軍事訓練の動きが急である。

 米国との関係の険悪化の中で対米牽制のためか、冷戦後最大規模の軍事演習「ボストーク2018」を極東部で中国軍の参加を得て実施している。この演習区域に北方領土は含まれていないと発表されているが、択捉島への戦闘機の展開などロシアは北方領土をあたかも対米関係の戦略的基地と考えているかのようだ。

 こうした動きもそうだが、これまでプーチン大統領がクリミア併合など、ロシアの主権を前面にかざす強硬措置をとることにより支持率を上げてきた経緯を見ると、今日、ロシア側に北方領土問題解決の機運が出てきていると考える根拠は見いだせない。