世界5位のビール会社、モルソン・クアーズが新商品のメインターゲットにすえるのは、ビール好きの中高年ではなく、「ビール離れ」「酒離れ」が顕著な20~30代。一体、ビールを飲まない人たちに、どうやって売ろうというのだろうか?
世界のビール大手が
日本市場に注目する理由
海外ビール会社の日本開拓が相次いでいる。世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)は、元々「バドワイザー」の日本市場での製造販売をキリンビールに委託していたが、今年7月、自社販売に切り替えると発表した。
アンハイザー・ブッシュ・インベブからSABミラーブランドを買い取り、世界シェア5位となったモルソン・クアーズ(アメリカ)は今年5月、プレミアムビール「ミラージェニュインドラフト」を日本市場に投入。今年度は100万本の売り上げを目指す。
今、プレミアムビール(350ml 200円以上の高級ビール)が世界的なトレンドとなっている。英国の調査会社・ユーロモニターの調査でも、プレミアムラガービールのマーケットは前年比で4%増、10年前と比べて32%拡大している。
こうした世界的な上昇トレンドに加えて、日本市場特有の好条件が世界の巨人たちを引きつけている。まずはインバウンド産業の成長。2019年のラグビーワールドカップ、そして2020年の東京五輪を控えて、訪日観光客数は右肩上がりに増えている。少なくとも2020年までは日本の経済状況は上向くことが予想されている。
加えて、2020年から始まり2026年までに完了する酒税の一本化も好材料だ。これによって、ビールの酒税は下がり、発泡酒や第3のビールの酒税は上がる。当然、今まで安いために競争力があった発泡酒や第3のビールの消費量が減り、元来のビールの消費量が増えることが予想されている。
今回は、モルソン・クアーズ・ジャパンでマーケティングを担当している名嘉眞(なかま)隼人さんに、日本のマーケットについて詳しく聞いてみようと思う。同社は「ミラージェニュインドラフト」以外にも、「ZIMA」「BLUE MOON」を日本国内でメジャーブランドに育ててきた実績がある。