秋山 いまのお話でいうと、企業の好きな言葉に「イノベーション」がありますが、これこそ経営理念とセットであるべきですね。

中島 「イノベーション」という言葉が入っていれば、セミナーの集客力が上がるとさえ言われています(笑)。しかし、「豊かな食生活の実現」という経営理念を掲げ、本気でその実現を目指すなら、その目的を達成するための「もっと良い方法」は、必ずあるはずです。

 もっと良い方法は、技術面ばかりではなく、まったく新しい商品、新しい素材・原料の調達方法、新しい組織、新しい販売方法など様々な局面でありえます。その「もっと良い方法」を探ることがイノベーションです。もっといいものを、もっといいサービスを、もっと無駄のないサステナブルなものをといった、飽くなき欲求の結果がイノベーションです。

秋山 そして、イノベーションというと、技術革新ばかりに目が行きがちというのも良く言われる話です。

中島 シュンペーターがいうように、本来は商品・サービス、生産方法、市場、材料や供給源、組織などがそれまでと違う次元で新しくなることをイノベーションというので、技術革新に限らないはずです。

秋山 このように、よいイメージで語られるイノベーションですが、実はこれまでと違うことをするわけですから、現場から見ると、予定調和を破る逸脱行為ですよね。従来うまくいっていたことを一から疑ってかかって、違った論理や技術、行動システムを持ち込むわけですから。
 
中島 企業業績が好調なら、株主はむしろ現状維持を望みます。株主がイノベーションにとって反対勢力になることもあるのです。しかし、経営者ならば、経営理念を達成し、企業価値を向上させるために是非必要だと、株主に説明して、納得を得られるように努力していくべきです。イノベーションは説明責任をともないます。説明、説得を燃える情熱でやり遂げるのがイノベーションです。そうすることで企業価値は上がり、その価値を株主にも還元できるのです。

秋山 それが、企業は「株主のため」にあるということの意味ですね。

(取材・構成/ライター 奥田由意)