価値について、あなたの考え方はどちらに近いですか?

この質問は、価値に対するあなたの捉え方について聞いています。左が多ければ企業主導のパラダイムで世界を見ている、右が多ければ顧客主導のパラダイムで世界を見ているということになります。

 では、同じ項目について、質問を以下のように変えてみるとどうでしょうか。

  「あなたの組織の行動はどちらの考え方を反映していますか?」

 同じ項目でも、左の回答が多くなったのではないでしょうか。というのも、多くの組織ではいまでも企業主導のパラダイムが行動規範を支配しているからです。成功するイノベーションの中には、後から考えるとなぜそのアイデアに気づかなかったのだろうか、と感じるものが少なくありません。自分たちが無意識のうちに作ってしまっている壁が、目の前にある機会を見えなくしてしまっているだけということも多いのです。

 人間は、自分が信奉している考え方と実際の行動を無意識のうちに都合よく使い分けているため、それらに矛盾があっても自覚することができません。こういったバイアスを意識化することで、潜在的な市場機会を発見する力が飛躍的に向上します。

フィルターを外して市場機会を捉える

 短期的な解決策を求めると、ビジネスを取り巻く状況を非常に狭い範囲で捉えがちです。人間中心イノベーションでは、暗黙の前提や業界の支配的な考え方といったフィルターを外すことで、より広い視野でイノベーションの機会を捉えていきます。ここでは、3つのレベルで市場機会を捉える方法をご紹介します。

 はじめに、業界の枠を超えて世界を動かしている新しいパラダイムから次の成長市場の機会を探索します。次に、業界を支配しているバイアスの発見。従来の考え方とは逆に、業界が力を注いできた領域を意図的に避け、手薄な領域の中に機会を見出します。最後に、製品レベルでの機会の発見。より大きな製品空間を描くことで、これまで活用されてこなかった価値提案の切り口を探索します。