ネット証券大手5社が激しいシェア争いを展開している。三菱UFJフィナンシャル・グループのカブドットコム証券の齋藤正勝社長に今後の成長戦略などを聞いた。
──証券業界の経営環境は。
株式取引の電子化が普及するなど、顧客のデジタルトランスフォーメーションが急速に進む中、証券会社によるシステム投資の巧拙が、業績に大きく影響するようになってきました。
象徴的な出来事が、今年10月に起きた東京証券取引所のシステム障害です。東証のシステムに回線を接続している証券会社約90社のうち、約40社で株式売買ができなくなりましたが、その大半が対面型の国内総合証券であり、外資系証券やネット証券はほとんど含まれていませんでした。
東証に接続する4回線のうちの1回線が、高速取引(HFT)を手掛ける投資家からの大量のデータ送信によりダウンしたのが原因でした。しかし、回線の一つがダウンしたのなら、残る3回線のいずれかに接続すればいいだけの話。実際、当社を含め、おそらく多くの外資系証券やネット証券では、障害を検知したら自動的に他回線で売買する設計になっています。
ところが総合証券の多くは、いまだに手動で切り替える仕組みのため、株式市場が開くまでに切り替えが間に合わず、売買注文ができない事態に陥ってしまいました。
──なぜ、総合証券は手動で切り替えるシステムを使っているのでしょうか。
多くの総合証券は従来のシステムを継ぎはぎしながら維持管理しており、デジタルトランスフォーメーションを一気に進めるのが難しいのです。