日産では、司法取引の以前から、海外の住宅購入や家族の海外旅行費用を日産の金で賄う「公私混同」について、極秘の調査委員会を設けてゴーン氏周辺を調べていたという。

 メンバーは西川社長らごく少数とされているが、豊田氏がこのメンバーではなかった、とは考えにくい。

 第三者の目を求められるのが非常勤取締役である。事件が表面化すれば日仏間の政治問題に波及することは明らか。官邸や経産省とパイプを持つ人物は必要とされただろう。

 検察にとっては、司法取引で大物を挙げる絶好のチャンス。日産は「完全統合」計画から逃がれる最後の機会だった。

「官民一体」の不正追及が進むなかで、豊田氏から、経産省や首相官邸にも情報が上がっていなかったとはとても思えない。

 トップを解任するなら、取締役会で解任動議を出すことだってできる。検察による逮捕をきっかけにトップを引きずり降ろすのは「社内クーデター」と呼ばれても仕方がない。

 クーデターを正当化できるとすれば、理屈は2つある。

 ゴーン氏の不正は会社で処理できないほど巧妙で悪質だということ。もう1つは、「ルノー・日産の不平等条約の改定」という大義の訴えである。

 つまり、やり方は乱暴だが、「こうするしか関係正常化の糸口はつかめなかった」と、世間に理解されるような言い訳だ。

 ルノーと日産は「立派になった子どもの仕送りで親が元気」という関係だ。

 企業規模、生産台数、売り上げ、利益どれも日産がルノーをはるかに上回っている。ルノーの利益の40%超は日産からの配当だ。そこに三菱自動車が加わった。三菱重工の流れをくむ三菱は技術的にも定評がある。

 だから経産省は心配でならない。トヨタに次ぐ自動車業界の主軸である日産・三菱を外資にさらわれると、危機感を抱いた。

 これが、“経産省お墨付き”の「日産クーデター」の「本音」ではないか。

外資に奪われた
失地回復で共鳴

 結局、すべては日産が経営危機に陥った1999年から始まった。

 有利子負債2兆円。6800億円の赤字を計上した日産を当時、経産省は救済できなかった。

 その頃の日産を表す言葉に「東大・興銀・通産省」という表現があった。