ファッションテックとはファッションとテクノロジーを組み合わせた造語で、ITを活用した新たなサービスを行うさまざまな企業が登場している。中でも目立つのは、冒頭のファッションポケットのようなAI関連企業である。
2011年の設立で、すでに実績を積み重ねているのがSENSY(センシー)だ。
ユーザーそれぞれの好みや感性を学習し、その人の嗜好に合わせた着こなしを提案したり、欲しい商品を推奨する「パーソナルAI」の開発を行う。
個人向けには無料スマホアプリの「センシークローゼット」を提供している。ユーザーは持っている服を登録することで、スマホ上でコーディネートなどができる。アイテム別や着用頻度順に表示したり、過去の着回しを確認したりできる利便性から、すでに20~30代女性を中心に推定価格で約30億円分の服が登録されている。
同社は、各ユーザーの感性や購買履歴などのさまざまなデータを解析して需要予測を行うことで、アパレル企業などに対し、効果的な商品仕入れや販促の提案などが可能となる。
実際、アパレル大手のTSIホールディングスの需要予測に活用した結果、粗利金額が10%上昇。また、紳士服大手のはるやま商事はダイレクトメール(DM)の送付で活用。購買の可能性が高い商品、効果的なキャッチコピーなど、顧客ごとにそれぞれ異なる内容で作成した結果、「DMを受け取った人の来店率が1.6倍に増加した」(渡辺祐樹・SENSY社長)という。
一方、AIを使って、ECサイトへのマーケティング支援などを行うのがサイジニアだ。
同社が17年2月から始めたのが、ファッション画像などから類似商品を検索できる無料スマホアプリ「パシャリィ」。
従来の検索エンジンでは文字にできないものは検索が難しかったが、パシャリィはそれを解決した。
ファッション雑誌でモデルが着ている服、SNSでフォローしている好きなタレントの着こなし、もしくは街中で見掛けた欲しい服などがあったとき、それを撮影してパシャリィで送信。すると、AIが画像を解析し、サイジニアと契約するECサイトで売られている約1000万点の商品の中から、複数の類似商品を表示する。
「あらゆる画像から商品購入ができるショッピング体験の実現を目指す」(吉井伸一郎・サイジニア社長)という。
大量配布のゾゾスーツに
ライバルが登場か
ファッションテックにおいて、これまで紹介したようなAI技術による事業支援などのサービスと並び、新たな活用が期待されているのがマスカスタマイゼーションへの取り組みだ。
マスカスタマイゼーションとは、消費者一人一人の好みや体形に合った一点物の商品を、大量生産と同様の低コストで生産すること。