学生服を作る場合、まずは学校や販売店などで生徒を採寸し、そのデータを基に裁断図面や縫製仕様書を作成し、生地を裁断して縫製する。光和衣料では従来、採寸から商品発送までに約2週間を要していた。ところが、新たに開発した生産システム「オートファクトリーシステム」を導入したことで、わずか3時間に短縮したのだ。

 このシステムの特徴の一つは、自社開発した3Dボディスキャナーにある(下左写真)。カメラなどを内蔵した3本の柱で1辺2.3メートルの正三角柱の装置を作り、生徒たちはその中央に立つだけで採寸できる。これにより、従来は1人当たり約5分を要した採寸時間が、わずか0.5秒に短縮。約100万カ所を瞬時に測定し、数値結果とともに3D画像で正確な体形が表示される(下右写真)。

 採寸データは社内サーバーを通して瞬時に受注データへと変換され、工場で生産を開始。従来、採寸から生地の裁断まで8日かかっていたが、それが18分となり、その他の工程も効率化を進めた結果、先述の通り、採寸から3時間で商品を発送するという驚異のシステムが完成した。

 同社は今後、オートファクトリーシステムを使ったコンサルティング業務にも乗り出す。

 1年以内には3Dボディスキャナーを大幅に小型化する計画で、「百貨店などの試着ルームに設置できるサイズになり、洋服のオーダーメード事業などに乗り出す企業が増えるだろう」(伴英一郎・光和衣料社長)と期待を高める。

創業130年企業がつくり上げた
究極の生産システム

 ファッションテックどころかインターネットという言葉すら一般的ではなかった80年代後半からITで独自の生産システムをつくり上げてきたのが、福井市に本社を置く1889年創業の大手繊維メーカーのセーレンだ。

 同社の最大の特徴は、「ビスコテックス」という独自の生産システム。分かりやすく言えば、生地用の大型プリンターを使い、一着ごとに色や柄を印刷するシステムだ。

 長らくOEM(相手先ブランドの受託生産)を中心にしてきた同社だが、15年にオーダーメードの自社ブランド「ビスコテックス・メイク・ヨア・ブランド」を展開。今年5月には下着メーカーのトリンプ・インターナショナル・ジャパンの前社長である土居健人氏を招聘、本格展開に踏み切る構えだ。