店舗で注文したデータはすぐに工場(左)へ送られ、1枚の生地にさまざまな商品のパーツが印刷されていく(右)

 多品種の一点物を短い納期で作る、つまり「欲しいものを、欲しいときに、欲しいだけ作ることができる」(牧田博行・セーレン専務執行役員)という仕組みをつくり上げたことで、アパレル業界の常識を覆す在庫ゼロを実現した。

納期はわずか1週間
オンワードが始めたオーダースーツ事業

 大手アパレルでもファッションテックを活用し、新たな事業モデルをつくり出す企業が現れた。

 オンワードホールディングス子会社のオンワードパーソナルスタイルは昨年10月、オーダースーツの新ブランド「カシヤマ ザ・スマートテーラー」を立ち上げた。

 従来のオーダースーツとの違いは、採寸から納品までの納期の圧倒的な短さと価格の安さだ。オーダースーツは通常、10万円以上し、納期も1カ月以上を要するが、オンワードは3万円台から用意し、納期も最短1週間に短縮した。

 とはいえ、「安いだけ」では全くない。平均キャリア20年以上のベテランフィッターが店舗、もしくは希望の場所へ行って採寸。200種類もある生地やいろいろなデザインを選べるのは通常のオーダースーツと同様だ。

 納期短縮、低価格を実現できたのは、ITなどを使った新たな生産体制を構築したことにある。