排気量2.5リットル以下の乗用車にかけられる自動車税が引き下げられる見通しとなった。このことについて、自動車業界からは「減税に風穴を開けた」、政府からは「自動車市場の活性化が期待できる」などとステークホルダーから自画自賛の声が続々と飛び出している。だが、最大のステークホルダーである自動車のユーザーにとって、果たして喜べる成果なのだろうか。(ジャーナリスト 井元康一郎)
こんなものは
減税といえない
そもそも、自動車税が減税になったのはこれが初めてではない。業界サイドは1950年に自動車税が創設されてから初めての引き下げを勝ち取ったと主張しているが、バブル爛漫(らんまん)の1990年に排気量2リットル超のクルマの自動車税が大幅減税となったことがある。
それまでは排気量2リットル(税額3万9500円)をちょっとでも超えると問答無用で3リットルまで8万1500円、それ以上だと11万円以上もの自動車税がかかっていた。排気量が小さくとも、車体サイズが3ナンバーだと3リットル車と同様の扱いだった。
特に2リットルと税額の差が小さい2.5リットル車は飛ぶように売れた。中でもまるで恒久減税の実現を読みきったかのようにタイミングよく登場した、三菱自動車の新型ラグジュアリーセダン「ディアマンテ」は爆発的ヒットとなったほどである。税額が8万1500円から4万5000円になったのだから、当然と言えば当然だろう。
3リットル車も5万1000円と、これまた3万円以上の引き下げで、それまでの2リットル超級の大排気量車は「特別な人のもの」という常識は一気に覆され、その後のバブル崩壊とともに終焉(しゅうえん)を迎えた“クルマブーム”の最後に花を添えることになった。
そのときのインパクトに比べれば、今回の“減税”のインパクトははなはだ希薄だ。前回は排気量の大きなクルマが新車だけでなくすべて減税になったのだが、今回減税の恩恵にあずかれるのは消費税増税後に売られる新車だけ。減税のスケールも最も差分の大きい排気量1リットル以下で4500円減、1.5リットルまでが4000円、2リットルまでが3500円、2.5リットルまでが1500円、2.5リットル超は減税なし。