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日立に電力事業を売却する
ABBのトップが語る企業改革への挑戦

末岡洋子
2018年12月27日
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ロボットと失業の関係

ABB CEOのSpiesshofer氏

 Spiesshofer氏の話を聞いていると、YuMiがABBの技術的方向性と組織の2つを象徴していることがわかる。

 技術の方向性とは、AIだ。「オートメーション(自動化)からオートノマス(自律的)へ」とSpiesshofer氏、単なる自動化ではなく自己修復など柔軟でスマートな特徴を備えるオートノマスがABBの目指すところだという。YuMiでは、「AIと機械学習を独自ハードウェアに組み合わせ、全く新しい市場を作った」とSpiesshofer氏、AIだけでなくハードウェアの差別化も重要だと続ける。「ABBはロボット分野のイノベーションのリーダーを目指している。YuMiの動画のビューは7億を超えており(注:現在12億回を超えている)、人々は新しい技術に感動、興奮している。これは重要なことだ」という。

 ロボットにおけるリーダーを標榜する一方、ロボットがもたらす影響についての分析も怠りない。ロボットは人間社会にどんな影響を与えるのか。Spiesshofer氏はまず、「技術を受け入れた国は、多くの人を極度の貧困から救った」と述べる。理由は、産業の品質と生産性レベルを上げることで、その国の産業の競争優位性が改善するから、だ。インドと中国では1990年代に技術を受け入れることで、合計4億人以上の人を極度の貧困から脱却させることができた。一方で、まだ技術の受け入れが進んでいないアフリカは、極度の貧困からの脱却がなかなか進んでいないと比較した。

 Spiesshofer氏はもう一つ、「ロボットの密度が高い国は失業率が低い」とも述べる。1万人の人間に対してロボット300台を目安としながら、ドイツ、日本、韓国、シンガポールなどは人口に占めるロボットの比率が高いが、これらの国は世界的に見ると失業率は低レベルだ、と指摘した。

 「人間と技術を正しい方向で組み合わせることができれば、雇用を促進し、価格低下につながり、需要を喚起できる」とSpiesshofer氏。「責任がある形で技術を受け入れることができれば」と付け加えながら、「技術を受け入れる影響についてきちんとコミュニケーションすることが大切だ」と述べた。

 コミュニケーションに加えて、第4次産業革命と言われる現代に特有なものとしてSpiesshofer氏は「教育」の重要性にも触れた。「これまで技術の進化は世代とともに進んでいたので、1つ世代で1つの仕事を身につければよかった。だがこの時代は終わった。人生の中で繰り返し新しい仕事やスキルを身につける時代になった」とSpiesshofer氏。「第4次産業革命と平行して、教育界や政府も果たすべき役割がある。歩調を合わせて教育を変える革命を起こさなければ」と述べた。自身も二児の父だが、「反復的ではない仕事を選ぶな」「人生の中で何回も学び直しがある」と子供にアドバイスしているという。

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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