フランス政府は300年近くもマリー・ベリエさんの一族に借金し続けている。マリーさんと夫のジャンさんは18世紀のある無名弁護士の子孫であることを証明すれば、世界最古の政府債の所有権を主張できる。しかし問題はそれだけの手間をかける価値があるかどうかだ。当時の通貨リーブルで発行された債券は3世紀分のインフレと通貨の切り替えを経た今、年間で1.2ユーロ(約148円)の利子を生み出すにすぎないからだ。「1年に1度、バケット1本が買える程度(の利子)だ」。パリ郊外のアニエール=シュル=セーヌにある自宅で81歳のジャンさんは言う。償還期限のない債券や償還期間が100年以上の債券は過去の遺物ではない。この10年の超低金利を受けて、各国政府や企業は債務の長期化を進めている。アルゼンチンやメキシコ、オックスフォード大学、英国最大の慈善団体の一つであるウェルカム・トラストなどは100年債を発行した。償還期限のない、いわゆる「永久債」 が発行されている国もある。