重要なのは、熱の怖さは「温度(℃)」ではなく、「総熱量(cal)」で被災の大きさが決まるということです。1000℃のガスライターの火が10秒間肌に触れても、その周辺は火傷を負いますが死ぬことはありません。しかし、200℃の熱風を10秒間全身に浴びれば人間は死に至ります。これは、熱風により身体の気道・肺部分が焼けただれ、呼吸できなくなることで、窒息するためです。

3.火災の煙による死傷

 これまでみてきたように、火災時は、火傷といっても、炎や熱で全身が焼けるというよりも、煙が運ぶ炎(および有毒ガス)や熱によって気道や肺が火傷をすることで、窒息死していることが多いことがわかります。一方で多いのは、煙に含まれる有毒ガスを吸引し、酸欠などにより窒息死することです。つまり火災現場では、煙の炎・熱か有毒ガスかにより、窒息で死亡することが圧倒的に多いのです。さらに言えば、初期消火の不奏功のほとんどは、煙が大きな要因となっています。

火災の煙成分を分解してみよう

 では一体、煙の何が人を死に至らしめるのでしょうか。また、そんな危険な煙を防ぐ手立てはあるのでしょうか。

 まずは、火災の煙(燃焼生成物)の正体を大まかに分類してみましょう。

(1)水蒸気(火災の初期や消火放水後の白煙)
(2)煤(=ハイドロカーボン、不完全燃焼により大量に発生する、黒煙)
(3)塵、ほこりなどの粉じん
(4)有毒ガス

(1)水蒸気は、それ自体には毒性は有りません。しかし、やかんでお湯を沸かした時などの水蒸気と違い、火災現場の消火放水によって発生する水蒸気(白煙)には、不純物が多く含まれています。また、高温であれば吸入とほぼ同時に気道に火傷(やけど)を負います。温度80℃以上では呼吸できなくなり、窒息(死)する恐れがあります。

 ちなみに、一般的なサウナ(ドライ)は100℃でも呼吸できますが、ミストサウナ(蒸気サウナ)では70℃弱が限界です。私が足繁く通う銭湯にある蒸気サウナで実体験したところ、70℃で呼吸が大変困難となりました(JR小岩駅から徒歩10分【軟水風呂 友の湯】https://www.tomonoyu.tokyo/)。