失敗や弱さを許容する社会へ

「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助氏の有名な言葉がある。

「成功とは、成功するまでやり続けること」

 今の社会には、失敗を許容し、成功するまでやり続けられる空気があると言えるだろうか?

 起業家にとってメンタルの不調は、自身の不調だけの問題では済まない。事業成長の鈍化や組織への悪影響という形で、さらなる状態の悪化を招くこともある。それが起こる前に早期に自覚して対処することが、負のスパイラルを止めることにつながるはずである。だが、起業家特有の精神的孤立や、「弱さをみせたら成功は遠のく」「失敗したら次はない」という社会の空気感が、起業家の抱える心の問題の発見を遅らせ、再起を難しくしているのである。

 メンタルヘルスの問題やリスクに対する適切な理解、対処、支え合える関係性を築いていく上で、まずは支援者、そして社会全体が起業家の失敗やメンタルのリスクを受容する姿勢が必要とされている。

 2018年11月に弊社が立ち上げた起業家向けメンタルサポートサービス「escort」では、その運営にVC(ベンチャーキャピタル)をはじめとする起業家支援に関わる20社以上による協賛金が充てられ、起業家は無料でメンタルサポートを利用できるようになった。これは、支援者の立場からもこの問題を真摯に受け止め、解決に向けて取り組んでいくことへの意思表示であるともいえよう。

 多様で自由な生き方が許容されるはずの時代において、「起業家としての成功」はごく一部の人たちに許されるスポットライトではなく、広く社会を照らす希望の光になるべきである。最初から成功可能性の高い「安牌」にのみコミットするのではなく、「起業」のあり方が多様化する中で起業家の失敗を受容し、不調な時期を乗り越えられるように支えることこそが、支援者ひいては社会としてのあるべき姿なのではないだろうか。

(株式会社cotree 代表取締役 櫻本真理)

【参考】
・起業家の37%に気分障害・不安障害の疑いあり 一般人の約7倍ゼロベース株式会社
・It’s Time to Acknowledge CEO Loneliness,Harvard Business Review 
・”Are Entrepreneurs ‘Touched with Fire’?”, Michael A. Freeman, M.D.University of California San Francisco(2015)