元「引きこもり青年」がラブホ勤めで認められ、主任に出世するまで引きこもり生活から一念発起し、ラブホ清掃の職に就いて認められ、主任にまで出世している青年がいる。彼はどんなモチベーションを抱き、どんな毎日を送っているのか

実は「引きこもり」に向いている
「ラブホ」という仕事

 ラブホテルで働くことは、真面目で細かいところにも目が行き届く「引きこもり」心性を持つ人との親和性が高いと言われている。

 千葉県市川市のラブホテル「ホテルM」で主任を務める船戸光明さん(35歳)も、そんな1人。引きこもっていた状態から同ホテルに就職し、今年で6年目を迎えた。

 ラブホテルで働くということは、基本的に「ルームさん」という部屋をつくる(掃除して仕上げる)仕事の繰り返し。お客の側も見られたくないという意識があって、お互いに接したくないというニーズがマッチするのだろう。どちらかというと人付き合いが得意でない人が多く、そうした事情は以前、別のラブホテルで取材したことがある。

 船戸さんの仕事の内容も、主に客が使ったものを元に戻して部屋を原状復帰させる清掃作業だ。
 
 もともと船戸さんは、約10年間工場に勤めていた。週休2日制になっていたものの、商品づくりの納期が迫るたび、休日出勤に追われた。終わることのない納期による超過勤務によって、「もう会社には行きたくない」というところまで追い込まられた。

 会社の勧めで、精神科を紹介された。「適応障害」と診断された。会社からは、落ち着くまで休職するように言われた。
 
 その頃、リーマンショックの影響で、会社の業績も倒産寸前まで悪化。早期退職の流れと重なって、船戸さんも会社を辞めた。以来、4年にわたって仕事に就けず、実家で引きこもる状態が続いた。仕事を探そうにも、気持ちの整理がつかなかった。

 この間、ほとんど家にいた。テレビを観たり、部屋で横になったりしていた。会社時代のことをグルグルと考えた。会社の超過勤務の現状を知っていた親は、「たまには休んでていいんじゃないの」と、船戸さんが家にいることを責めなかった。