昨年から最も魅力度を上げた市区町村は三重県伊勢市。16年の伊勢志摩サミット効果で21位に上がり、17年には32位まで順位を落としたものの、18年は14位にV字回復。観光意欲度も30位から12位に上昇した。

 「サミットや世界遺産などの舞台となった市町では、一時的に魅力度が急上昇し、翌年以降急落するのがセオリー。それを覆す稀有な例」と田中氏も称賛する。

 なぜ伊勢人気は終わらないのか。それは伊勢神宮、商工会議所、伊勢市、大学の「宗産官学」ともいえる連携にあった。

 スタートは伊勢志摩サミットより3年以上前、13年の「式年遷宮」に向けたPR活動だった。天照大御神を祭る伊勢神宮では、20年に1度、社殿を造り替えて神体を移す式年遷宮が行われる。飛鳥時代から1300年の長きにわたり行われてきた神事の年には、日本中から多数の参拝者が訪れる。

 とはいえ参拝者の多くは、全国の神社の氏子や農林水産業従事者など神道の信仰者。あくまでも「信仰者による祭祀」だった。それを一般の人にも広く伝え、開かれた式年遷宮に変えようと考えた。

 積極的なプロモーションの結果、多数のメディアが取り上げ、日本人が動いた。過去の式年遷宮の、1973年859万人、93年839万人の参拝者に対し、13年は1420万人を記録したのだ。

 伊勢の本当のチャレンジはこれを継続させることだった。まず取り組んだのはインバウンドだ。

 「13年より毎年、海外の研究者を伊勢にお招きして3週間程度滞在していただき、神道系学校である皇學館大学がサポートして、伊勢神宮や神道について研究していただいている。これまでオックスフォード大学、キエフ大学、北京大学の方々がいらした」と鈴木健一市長(43歳)は語る。研究者らは帰国後、伊勢神宮の魅力について、授業や学会、SNSでも拡散。海外での認知度を高めた。その他にも、多言語メニューの制作費に対する補助金や、店舗や宿泊施設等の従業員を集めての英語応対、おもてなし研修なども行っている。

 また店舗、民宿等のバリアフリー改修のための補助金を新設。おかみの高齢により廃業寸前だった日の出旅館は、リニューアルで人気の宿に。楽天トラベルの「気ままな女性の一人旅に人気の国内レジャー宿ランキング」で3位を獲得。他にもバリアフリー改修を行った店から、「高齢の従業員が働きやすくなって喜んでいる」という声も寄せられているという。

 17年に行った伊勢市観光客実態調査では、観光客のリピーターは約8割、10回以上の訪問者は3割に及ぶ。式年遷宮から4年たった17年も、参拝者は880万人という高い水準をキープしている。

 就職して地元を離れていた鈴木市長が伊勢に戻った15年ほど前、駅前に二つあった百貨店がつぶれ、伊勢神宮外宮の参道はシャッター街状態だったという。そんな伊勢がにぎわいを取り戻せたのは、観光資源にあぐらをかかず、新しいチャレンジを続けたからだ。

住みたい街にある格差
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