ベイカレント新社長の経歴に漂う“謎”とは?外資系IT、外資戦略系…“超華麗キャリア”の実相男子ゴルフ「ベイカレントクラシック」記者発表会で、(左から)ベイカレントの北風大輔副社長執行役員、阿部義之社長、プロゴルファーの松山英樹氏=2024年12月 Photo:SANKEI

国内発のコンサルティングファーム、ベイカレントは急速な台頭を遂げてきた。足元で人員数は5000人を突破し、コンサルビッグ4超えも果たした。だが、あまりに急激な成長は組織や社内風土のひずみも顕在化させつつある。爆速成長の陰でベイカレントがはまった罠とは。長期連載『コンサル大解剖』内の特集『ベイカレント 爆速成長の罠』では、複数回にわたり、特異なビジネスモデルや組織風土に加え、採用や待遇の実態などに焦点をあて、ベールに包まれてきたベイカレントの実像を浮き彫りにする。初回となる本稿では、5月27日に社長に就任する予定の北風大輔副社長執行役員の経歴に漂う不可解な点を明らかにしていく。謎多きコンサルタントともいえる新トップの「超華麗キャリア」の実相とは。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

ベイカレントは売上収益が「8年で7倍」に
爆速成長ファームの新社長は「謎多き人物」

 2024年12月11日、米男子プロゴルフのPGAツアーは25年から日本で新規大会「ベイカレントクラシック」を開催すると発表した。社名を冠する大会のスポンサーに就いたのが、国内発のコンサルティングファームのベイカレントだ。これまで米PGAツアーの冠スポンサーとなった日本企業はソニーグループやホンダ、日産自動車、ZOZOといった超大手企業で、ベイカレントもそこに名を連ねた格好だ。

 同日、東京都内で開かれた記者会見には、男子プロゴルファーの松山英樹氏がゲストとして登場したほか、ベイカレントの阿部義之社長と北風大輔副社長執行役員も同席した。松山氏や阿部氏、北風氏に加え、米PGAツアーの幹部はベイカレントの大きなロゴの前に立ち、笑顔で写真撮影に応じた。

 それから3カ月後の2月19日、ベイカレントは北風氏が社長に昇格し、阿部氏が会長に就くトップ人事を発表した。「ベイカレントクラシック」の会見はさながら、次期トップを先んじてお披露目する場になったともいえる。

 ベイカレントは、創業者の江口新氏が1998年に設立したIT人材業のピーシーワークスが前身だ。06年にはベイカレント・コンサルティングに社名を変更した。08年のリーマンショック後のコンサル需要低迷による業績不振を経て、12年にマッキンゼー・アンド・カンパニー出身の萩平和巳氏が社長に就いた。14年にはMBO(経営陣による買収)を実施し、2代目のベイカレント・コンサルティングに衣替え。16年9月には東証マザーズに上場した。

 上場直後に業績不振に陥り、16年12月に野村総合研究所出身の阿部氏が社長に就任。阿部氏はデジタルトランスフォーメーション(DX)特需の追い風も受けて業績を回復させると、その後は積極採用を継続し、業容を一挙に拡大してきた。

 その“爆速”ぶりは目を見張るものがある。25年2月期の売上収益は、前期比23.6%増の1160億円。これは阿部氏がトップ就任直後の17年2月期の171億円と比べて7倍弱に当たる。従業員数も同期間で1194人から4784人と4倍に膨らんだ。2桁成長を続け、まさに収益も人員数も膨張したのだ。すでに人員規模はコンサルビッグ4を上回る。4月からは日経平均株価の構成銘柄にも採用された。

 急成長のファームのかじ取りを任されることになったのが、江口氏から数えて4代目の社長に就く北風氏である。トップを8年超務め、ベイカレントを成長軌道に乗せた阿部氏からバトンを受け継ぐ。

 ただ、新トップとなる北風氏は、これまでベールに包まれた存在だった。ベイカレント関係者はこう打ち明ける。「出世する人は大型案件を手掛けていることが多いが、北風氏は何の案件をやったかよくわからない」。

 そして、何より謎が多いのが北風氏のキャリアだ。これまで北風氏は外資系IT企業や外資戦略系ファームなどに籍を置いたとしている。一見、超華麗なキャリアだが、取材を進めるといくつかの疑問が浮かび上がった。

 次ページでは、爆速成長を続けるベイカレントのトップとなる北風氏の経歴をたどり、実相を明らかにしていく。一方、北風氏の経歴に関するいくつかの疑問について、ダイヤモンド編集部がベイカレントに質問状を送付したところ、回答が寄せられた。回答の中身も明かす。