激動!決算2025Photo:PIXTA

金利上昇を追い風に、2025年3月期の銀行業界では収益回復がいっそう鮮明になった。そんな中で注目を集める指標の一つが、経営効率を示す経費率だ。特集『激動!決算2025』の本稿では、メガバンクから地銀、第二地銀まで全103行を対象に最新の経費率を集計。前年からの改善や悪化も可視化し、ベスト&ワースト1位の銀行を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

金利上昇で84%の銀行が増益
経費率が大幅に悪化した銀行も

 5月23日、全国103行の銀行決算が出そろった。金利上昇の追い風を受け、全体の84%に当たる87行が増益を達成。長らく低金利に苦しんできた銀行業界は、昨年来の収益回復が一段と鮮明になっている。

 そんな銀行業界で注目度の高い指標の一つが経費率だ。経費率は経費÷業務粗利益で算出され、数値が高いほど経営効率が悪いことを示す。

 最近では、より踏み込んだ経費率目標を掲げる動きが目立っている。ふくおかフィナンシャルグループ(FG)は5月12日発表の新中期経営計画で、現在61.5%の連結経費率を27年度までに50%台半ばへ引き下げると表明。りそなホールディングス(HD)も今後5年以内に40%台を目指すと明言しており、各行の経費率への意識は一段と高まっている。

 経費率に注目するのは銀行側だけではない。金融セクターに特化した投資ファンド、ありあけキャピタルもその一つだ。

 同ファンドが狙いを定めたのは、経費率が70%台と高止まりしていた千葉興業銀行だ。22年中ごろから投資を始め、25年1月には筆頭株主に浮上。ありあけキャピタル代表の田中克典氏は「24年1月に、当社保有株式を使って事業提携先を見つけるなど、経費率を下げる改革に踏み込むべきだと千葉興銀に伝えていた。だが、進展がなかったので、25年1月に議決権の保有割合を19.9%まで増やし、自ら売却先を探した」と振り返る。その後、3月に千葉銀行との交渉が本格化し、千葉興銀株の全株売却に至った。

 さらに5月16日には、大阪を地盤とする池田泉州ホールディングス(HD)の株式を5%超取得したことが判明。傘下の池田泉州銀行の経費率は70%台と比較的高く、今後はありあけキャピタルが議決権比率をさらに高め、再編圧力を強めていく可能性もある。

 では、銀行と株主の双方が注目する最新の経費率はどうなっているのか。ダイヤモンド編集部は、メガバンクを含む大手行、地銀、第二地銀、埼玉りそな銀行やあおぞら銀行を含む全103行を対象として、QUICKの「QUICK Finer Compass」のデータを基に、25年3月期の経費率ランキングを作成した。

 24年3月期と比べると、経費率が改善した銀行が多い一方で、大幅に悪化した銀行もあった。中には、あえてコスト増を受け入れ、経費率が20ポイント以上悪化しながらも戦略的に勝負に出た銀行も。次ページで、全103行の最新の経費率を一挙に公開する。