テクノロジーの活用によって、採用や人材育成、労務管理などの人事業務を行う技術である「HRテック」が、ありとあらゆる企業で取り入れられ始めている。なぜ今HRテックなのか?HRテックの第一人者である慶應大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授が解説する。(談/慶應大学大学院経営管理研究科特任教授 岩本 隆、構成・執筆/ライター 相馬留美)
中小企業でも
「HRテック」の導入が進む
「HRテック」の市場が盛り上がってきています。
HRテックというと、とても目新しいものに感じるかもしれませんが、じつはシステム自体は1960年からあり、特別なものではありません。
ただ、最近よく聞かれるようになったことには、2つの大きな理由があります。
1つは、通信環境や技術の進歩に伴い、導入コストが大幅に下がったからです。
大容量のビッグデータがAIなどで簡単に解析できるようになったことに加え、システムのコストが一気に下がり、かつては大企業で何億円もかけないと実現できなかったHRマネジメントシステムが、最近になって社員一人当たり月100円レベルにまで下がりました。社員一人ひとりに缶コーヒーを月1本ずつ配る感覚でHRテックを導入できるようになったわけです。
もう1つが高機能化によるものです。
紙ベースだった従業員のデータがクラウド化し、どこからでもアクセスできるようになりました。
するとどんなことができるのか。
例えば、大企業では数百の人事パラメーターで人事データベースを作り、「育成」「人材配置」など用途に合わせて分析できるようになります。また、ハイパフォーマーのデータを使えば採用に生かすことができたり、あるいはハイパフォーマーを見つけて離職防止に生かすというようなこともできるようになったりするわけです。