犬の寿命が大きく延びている一方、病気やケガで障害を負ってしまったり、認知症を発症して徘徊や夜鳴きで飼い主を悩ませたりするケースも増えている。そんな中、自身の犬の看病経験から、安くて使い勝手のいいオーダーメード車いすを販売、さらに看病の無料相談にも乗ってくれる工房が注目を集めている。
相場の数分の一の価格で
注文が殺到する工房
ペットの高齢化が進んでいる。犬の寿命は1970年代には約10歳だったが、最近では15歳まで平均寿命が延びている(一般社団法人ペットフード協会の調査)。20歳を過ぎても元気に暮らしている犬も少なくない。その半面、高齢化が進むにつれ、ケガや病気になるペットも増えている状態だ。
そんな時代を背景に、犬の車いすを専門に作る工房へ全国から注文が殺到している。
大阪市住之江区にある「工房スイーピー」は、それぞれの犬に合わせたていねいな作りと、価格の安さで評判を呼んでいる。
住宅街の一角にある小さな工房スイーピー。迎えてくれたのは、川西仁美さん、英治さんご夫妻。英治さんが製作を手がけ、妻の仁美さんは注文や相談に応じている。店内には壁一面に、車いすに乗った可愛らしい犬の写真が貼られている。
注文は来店以外にネットや電話でもできるとあって、ただいま全国から依頼が殺到。1台1台手作りのため、現在1ヵ月半から2ヵ月待ちの状態である。
犬の車イスは、オーダーメードだと6万から10万円が相場だが、工房スイーピーでは、小型犬用(7kgまで)は1万8000円から。中型犬(16kgまで)になると2万2000円からと、市価よりもかなり安い(ともに二輪車)。
「来店されたら、まずワンちゃんに試乗してもらいます。そして病気の状態を詳しくお聞きします。時には生い立ちから聞くこともあります。というのも最近増えている保護犬の場合は、車いすを怖がるケースもあるんです。また、車いすに乗ることでストレスになるワンちゃんもいます。そういう場合は、きちんと説明してお断りすることもあります」(川西仁美さん、以下同)
その上で車いすを使うメリット・デメリットを伝えて、お客さんに納得してもらったら採寸をして製作に入っていく。
ネットや電話注文の場合は、同様に病気やケガの状態を聞いた上で、採寸用の参考画像を送る。必要な場合は、犬の状態がわかる動画を送ってもらうこともある。
「ワンちゃんは1匹ずつ個性やクセが違います。また飼育環境や生育歴も違う。それらを詳しくお聞きすることで、よりピッタリ合うものができるのです。うちは、ワンちゃんが歩きやすく、丈夫で安くをモットーにしています」
現在の状態だけでなく、年を取った後のことまで予測して、いかに使いやすいものを作るかを工夫している。このていねいな製作過程が口コミで広がり、注文が殺到しているのである。