電力業界を担当して1年半。編集部で誰よりも業界に詳しいと自負していた。当然、電気はお得なプランに切り替え済み。同僚から「面倒くさくて切り替えてないんだよ」と聞けば、心の中で「俺は勝ち組だな」とほくそ笑んでいた。

 なのに、である。本特集を担当するに当たり念のために調べたら、もっと安いプランが存在していた。

 2016年4月、電力小売り全面自由化が始まった。これまでは電気代を削るとしても、せいぜいスイッチを小まめに切り替えたり、エアコンの温度を調整したりして節電するのが関の山だった。自由化が始まり、契約会社や料金プランを切り替えるだけで、手軽に電気代を安くできるようになった。わが家も引っ越しのタイミングで契約先を切り替えた。

 自由化前の電力業界は、大手電力会社が地域を独占する競争ゼロの無風状態(下図「Point1」参照)。利用者は問答無用で地域の大手電力と契約を結ぶしかなかった。「電力の安定供給」というもっともらしい理由から、あらゆるコストに利潤を乗せて料金を徴収する総括原価方式がまかり通り、ビジネスは超安泰だった。