今なぜ、ロールケーキが大人気なのか?<br />コンビニの「スイーツ戦争」を制した意外な強み誰もが一度は食べたことがあるロールケーキ。子どもの頃に舌鼓を打った記憶を、懐かしく思い出す向きも多いだろう。目新しいスイーツではないロールケーキが、なぜ今人気なのか。

 コンビニのスイーツ人気は相変わらずで、なかでもロールケーキは昨年のコンビニでの売上げだけでも105億円。前年から約7%増えている。

 ロールケーキが流行っていることは知っていたが、それほどの人気とは驚きだ。なぜショートケーキやモンブランではなく、ロールケーキなのだろうか?

 ここにきて、ロールケーキが人気したきっかけと言われるのは、大阪はモンシュシュの「堂島ロール」に注目が集まったこと。今や行列ができるほどの人気ぶりだ。1本1260円というから、高級ロールケーキと言ってよいだろう。

 それに対してコンビニのロールケーキは、気軽に食べられる普及品といったところだ。この気軽さが(コンビニでの)ロールケーキ人気の理由の1つだ。

 コンビニのスイーツは、たゆまぬ商品開発の結果、一昔前の専門店並みの味に到達した。しかしいくら安価とはいえ、「昼休みにショートケーキ」というのは気が引ける。コンビニ側としても、クリームを乗せた商品は比較的運びにくく、陳列もしにくい商品だろう。日持ちの問題もある。

 考えてみれば、それらのハードルをロールケーキはすべてクリアしている。菓子パン感覚で食べられるし、価格も安い。フォークを使う必要もない。脳が生クリームを使った菓子を欲したとき、専門店に出向かなくても近所のコンビニでとりあえず満足できるのだ。これは、男性顧客を取り込む上でも重要な要素である。

 ただし、「ロールケーキが大人気!」と言っても、飛びぬけた存在というわけではない。だが、お菓子の人気ランキングを見ると、エクレア、シュークリーム、チーズケーキ、プリンなどと並んで定番化しているようだ。

 いずれにも共通するのは、「クリーミー」という点だ。「甘さひかえめ」「上品な甘さ」を目指すと言うより、「濃厚なクリームで満足感を」という潔さは、顧客調査の賜物だろう。コンビニにおいては、甘いものが苦手な人でも食べられるスイーツには、ほとんど意味がない。甘いものが嫌いならば、買わなければいいだけの話だからだ。

 次の流行トレンドは読めないが、夏のアイスクリームは当然として、冬に向けてレンジで温めるタイプのスイーツや、湯を注いで食べるフリーズドライ型のスイーツが登場するのでは……と予想しておく。

(工藤 渉/5時から作家塾(R)