2011年にジョブズが死去した時、多くの専門家は「アップルはこれから駄目になる」と予測した。ところが、ジョブズの後を継いだCEOティム・クックはアップルの売り上げを伸ばし続け、2018年夏にはビジネス史上初の時価総額1兆ドルを突破。iPhoneの累計販売台数は15億台を超えた。
ジョブズ亡き後のアップルでは一体何が起こっていたのか。そして、2019年1月に起きた「アップルショック」はアップルの終焉のはじまりなのか。『アップル さらなる成長と死角』の著者であり、アップルでの勤務経験を持つ竹内一正氏がその舞台裏を3回にわたって解き明かしていく。
【第1回】「アップルがジョブズを失っても史上初の1兆ドル企業になれた理由」はこちら
iPhoneが成功した3つのワケ
2019年1月、「アップルショック」が世界を襲った。
これは一過性のものなのか、それともアップル凋落の序章なのか。iPhoneは今後どうなるか、さまざまな予測が飛び交っているが、iPhoneが21世紀で最も成功した製品であることは間違いない。
世界スマホ市場の利益の9割はiPhoneが生み出し、累計で既に15億台を超える販売台数を誇るiPhoneは、そもそもなぜ成功したのだろうか?理由は3つあった。
1つ目は、「ジョブズの取扱説明書」をジョブズの側近たちが持っていたこと。
2つ目は、テクノロジーがジョブズの発想に追いついたこと。
3つ目は、iPhoneをアップルで生産しなかったこと、だ。
「ジョブズの取扱説明書」とは
ジョブズは感情の起伏が激しく、直観で物事を判断する気難しい経営者だ。
もし、秀逸なアイデアを部下が提案しても、ジョブズが直感でノーと言ってしまえば、それで一巻の終わりだ。つまり、側近たちからすれば、ジョブズの取り扱いには細心の注意が必要だということである。
フィル・シラーたち側近は、長年のつき合いでジョブズの行動パターンを学習していた。例えばジョブズは部下からの最初の提案は必ず否定するといったことだ。