ドナルド・トランプ米大統領の挑発的発言の多くは、決して実現しないものだ。難民認定を求める移民を、不法移民に寛容な政策を取る「サンクチュアリー・シティー(聖域都市)」に送り込むという今回の脅しも、その一例かもしれない。われわれはそう期待する。なぜなら、こうした政策は民主党系の市長らを愚弄(ぐろう)する一方で、2つの重要な法的・政治的利益と相反するからだ。移民規制は憲法の下で連邦政府の責任とされている。この解釈に基づく主張は、連邦政府による法の執行に抵抗する「聖域」の州法に対抗するため、トランプ氏と保守派の人々が活用してきたものだ。しかし、トランプ氏がサンフランシスコやシアトルに向けて移民送り込みを開始すれば、実務的な諸問題が発生する上に、州や市が独自の政策を実施できるという考え方に正当性を与えてしまうことにもなる。これは、聖域都市を相手取ったあらゆる裁判において、トランプ政権の法的主張を後押しするものとはならない。
【社説】「聖域都市」発言の不合理
不法移民を民主党地盤の大都市に送り込むことはトランプ氏の利益に反する
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