通年採用は、学生と企業の人事部双方の創造性を高めます。一括採用は、企業の人事担当者にとっても採用活動をルーチン化し、能動性をそいだ側面があったことは否めない Photo:PIXTA

経団連が一括採用を廃止し、通年採用の方針を打ち出した。通年採用の実現は、企業と学生のミスマッチを解消するだろう。加えて、もう1つの、とても大きな効果をもたらすに違いない。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)

短期決戦が企業と学生の
ミスマッチを生んできた

 経団連が大学生の就職活動について、卒業後の4月入社を前提とした就職スケジュールを廃止し、通年採用に移行する方針を打ち出した。3年後の2022年春から実施する方針だ。これまでは、大学3年生の3月に企業説明会が解禁となり、4年生の6月に面接解禁、10月に内定が出るというルールにのっとって、多くの企業や学生が一斉に動いていた。

 企業側も一斉に面接するし、学生も志望企業を一気に回る、いわば短期決戦だ。インターンによって、企業が学生の真の姿を見極めたり、学生が企業の実態を確認したりする機会はあるものの十分とはいえず、企業と学生のミスマッチが起こりやすい状況だったといえる。学生側の就職浪人を避けたいという思いが、短期集中型の就職活動に拍車をかけてきた。

 これが、通年採用への移行で、適切なタイミングで、十分な時間をかけて企業は選考でき、学生も選択ができるようになっていくだろう。説明会解禁や面接解禁といったルールで決められた時期にとらわれることなく、長期インターンを終えてから、そのタイミングで就職選考に入ったり、大学卒業後に就職活動するケースも出てくるだろう。

 私は数年来、横浜国立大学大学院で工学専攻の修士1年生に「グローバルスタンダードの次世代ビジネススキル」演習の講座を実施している。ビジネスに必要な実践スキルを修得して駆使しながら、自分自身のキャリアプランを作成して、実行に移していく。

 研究活動を続けるにせよ、ビジネスに携わるにせよ、進路を選択し、就職活動を始める1年前にキャリアプランを描くのだ。この講座を実施し、学生の就職相談にも応じている経験をふまえると、通年採用の実現は、まことに歓迎すべきことである。