「支払いが先、入金はあと」の過酷なビジネスモデル
通常、レーザー専門の輸入商社のビジネスでは、販売代金を受け取るよりも前に支払いが生じます。
海外メーカーから装置を輸入して日本で販売する場合、
「支払いが先、入金はあと(納入先からの入金がなくても、仕入先に支払わなければならない)」
になります。
したがって、入金までの期間が長く、その間に経費の支払いばかり発生すれば、手許資金が少なくなって、経営体質が悪化します。
基本的に、海外メーカーとの取引は、インボイス(請求書/輸出者と輸入者の間で取り交わされた商業取引を示す書類)を受け取ってから、「30日以内」に支払うのが原則です。
たとえば、仕入先から送られてきたインボイスの日付が4月1日なら、4月30日までに支払いをすませなければなりません。
ところが、納入先からの入金は、性能確認や検収(仕様どおりの装置に仕上がっているかの確認作業)を終えてからです。
カタログビジネス(顧客に商品のカタログを送付して注文を受ける販売方式)であれば、製品を出荷した時点で売上になります。
しかし、大がかりなシステムの設計・開発・納入となると、既存モデルの販売とは異なるため、時間がかかります。
検収には、長ければ数ヵ月かかるでしょう。
キャッシュアウト(支払い)とキャッシュイン(入金)のタイムラグが大きければ、資金ショートを起こしかねないわけです。
レーザー専門の輸入商社は、「支払いが先、入金はあと」という意味で、未来に先行投資をするビジネスモデルです。
ある研究機関から、「レーザー装置の開発」を受注したときのことです。
予算は8億円。
私たちは、レーザー装置の開発をフランスの「A社」に委託しました。
発注時にまず1億5000万円を送金。
その後レーザーが完成するまでの1年半に3回、合計で4回、6億円をメーカーからの出荷前に前払いしました。
納入後の支払いが1億円で合計7億円が純コストです。
一方、研究機関は先払いではないため、検収を終えてからの入金です。
A社に対する支払いの原資は、すべて自己資金でした。
A社に「6億円の先払い」をしても資金ショートしなかったのは、日本レーザーがB/Sの改善に努め、「キャッシュ(現預金)を持っていた」からです。
キャッシュに余力がなければ、未来に投資することは不可能。
こうした海外に開発を委託する案件の受注ができるレーザー専門の輸入商社は、当社を含めて国内に2社程度しかありません。
ps.「25の修羅場」の詳細は、第1回連載「倒産寸前から売上3倍、自己資本比率10倍、純資産28倍!「25の修羅場」が「25年連続黒字」をつくった理由」をご覧ください。きっと、私が血反吐を吐きながら、泥水を飲みながらのここまでのプロセスの一端を垣間見れるかと思います。