1989年春に天安門広場で学生が行った民主化デモには忘れがたい場面がいくつもある。もちろん、流血の事態に至った悲惨な結末もその一つだ。人民解放軍の戦車の前に武器も持たず、落ち着いた様子で立ちはだかった勇敢な男性の悲痛な姿もそうだ。しかし、米国人にとっておそらく最も強烈な映像は「民主の女神」像だった。民主の女神は学生が制作した間に合わせの像で、毛沢東の肖像画と霊廟(れいびょう)の真向かいに設置された。学生運動の指導者らは米国の「自由の女神」のレプリカではないと主張したが、そのよく似た姿を米国人が見逃すことはなかった。トーチを高く掲げる女性像は、自由な空気を求める世界中の人々の権利と願いを後押しする役割が米国にあることを想起させた。