「マーケットと投資家のしっぺ返しが心配だ」。経済産業省の幹部が示した強い懸念が現実のものになった。言うまでもなく米大統領のトランプが突き進む対中国強硬路線のことだ。すでにトランプは中国からの全輸入品のうち2500億ドル分について関税率を引き上げ25%とし、米中協議が物別れに終わると、即座に残る3000億ドル分にも制裁関税を課す手続きに着手した。これが実施されれば昨年7月に踏み切った、半導体などの関税強化の第4弾になる。トランプはなぜここまで強硬なのか。
「トランプの思考は全て来年11月の米大統領選に向かっている。中国と戦う姿勢が支持率を上昇させる」(日本政府高官)
しかし、中国も黙ってはいなかった。日本時間13日午後9時、ニューヨーク株式市場の取引開始時間を見計らったかのように報復に出た。600億ドルの米国製品にかけている関税を最大で25%引き上げると発表。ダウは急落した。
米中摩擦は日本にとって人ごとではない。中国の対米輸出製品の部品の多くは日本から輸入している。結果として日本の対中輸出が減少する。さらに米国市場が縮小すれば対米輸出にも大きな影響が出る。米中貿易戦争によって日本はダブルパンチを受ける。東京証券取引所の日経平均株価は7営業日連続(14日現在)で下げ、対ドルも円高に向かった。米中が火花を散らす中、13日に発表された3月の景気動向指数で基調判断が「悪化」に下方修正された。「悪化」の基調判断は実に6年2カ月ぶり。米中摩擦も長期化の様相だ。