「これから一気に解散に向けた流れが強くなる」。自民党最高幹部の一人がこう言えば、長老は「今、衆院選挙をやって安倍さんにメリットがありますか」と反論する。自民党政調会長の岸田文雄は「自民党議員が集まれば、必ず同日選挙の話題になる」と語る。日を追うごとに同日選モードが加速する。そんな永田町の空気を生む大きなきっかけとなったのが5月17日の官房長官、菅義偉の記者会見だった。
「野党側が内閣不信任案を提出した場合は衆院解散の大義名分となるのか」
こんな質問に菅はいつになく明快に答えた。
「当然、なり得ると思う」
年初以来、浮かんでは消え、消えては浮かぶ同日選をめぐる議論はいまひとつ説得力に欠けていた。その最大の理由は「解散の大義」が見えていなかったからだ。菅発言の意味は初めて“根拠”を明示したことにあるといっていい。
従来の同日選のシナリオは、10月に予定される消費増税を延期するため「消費増税延期解散」という2014年11月の解散パターンを踏襲することにあった。
ところが、増税延期説には経済界から非難の声が噴出。消費増税に備えて政府は約2兆円の対策予算を計上、その一部の執行が始まっている。さらに財政再建への取り組みに対する首相の安倍晋三への不信感が増幅する可能性が高まった。菅も10月の消費増税について「予定通り」を繰り返す。
「(日本経済の)内需を支えるファンダメンタルズ(基礎的条件)はしっかりしている」