「米利下げ」は必ずしも円高を招かない?過去の局面分析でわかること仮に米国で利下げが実施された場合のドル円の動きを考察するために、過去5回の米利下げ局面とドル円の動きを検証した。その結果、わかったこととは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

米利下げ期待が高まるなか
為替市場ではドルが下落

 5月に米中貿易摩擦が再び激化したことに加え、6月には米雇用統計(5月分)が悪化したことなどで、金融市場では米国の利下げ期待が急速に広がっている。米FF金利先物市場では、今年(2019年に)3回程度の利下げが織り込まれつつあり、ドルが全般的に下落している。ドルの名目実効レートは、5月31日をピークに0.8%程度下落した。ドル円は、米利下げ期待を背景に米国株が底堅く推移していることから円安圧力が働き、下げ幅が限定的となっているが、4月下旬の112円台から、6月に一時108円割れへ下落した。

過去5回の利下げ局面での
ドル円の動きを検証する

 今後、米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ決定後のドル円の動きを考えるため、過去の米利下げ局面におけるドル円の動きを検証した。1988年以降の利下げ局面は、①89年6月~92年9月、②95年7月~96年1月、③98年9月~98年11月、④01年1月~03年6月、⑤07年9月~08年12月の計5回である。これらを(1)連続的で大幅な利下げ局面、(2)少数回の小幅利下げ局面の2つのケースに分類し、米景気(拡大/後退)との組み合わせで検証した。

 米景気の拡大/後退の判定については、全米経済研究所(NBER)の景気基準日付に基づき、景気の谷(trough)から山(peak)の期間を景気拡大期とし、反対に山から谷の期間を景気後退期とした。景気後退期は米景気一致指数の低下局面と一致し、米景気先行指数のピーク時に2年前後遅れて実現するパターンがある。