「古いマネジメント」が会社を滅ぼす

 ですから、当時の組織マネジメントが「間違っていた」わけではありません。
  しかし、「人口ボーナス期」はとっくに終わり、日本はいま「人口オーナス期」に位置しています。もはや「人口ボーナス期」の成功体験が、まったく通用しない時代に突入しているのです。

「人口ボーナス期」と「人口オーナス期」では、「勝てる働き方のルール」が真逆です。「人口オーナス期」には、労働力人口が不足しますから、いかに男女をフル活用できるかが重要になります。また、労働の時間単価も高騰するので、短い時間で成果を上げる企業しか利益を出せなくなります。さらに、消費者ニーズの多様化に対応するためには、社内(現場から意思決定層まで)にいかに多種多様な人材を抱えることができるかが、勝負を決するようになるのです。

 にもかかわらず、漫然と「人口ボーナス期」の働き方・マネジメント手法を続けていれば、間もなく多くの企業が危機的状態に陥りかねないのです。

 特に、切迫した問題を抱えているのが団塊ジュニア世代です。

 彼らは、多くの企業で最もボリュームのある年齢層であるとともに、これからの企業の中核を担う世代です。ところが、彼らは、育児に追われながら、両親の看護・介護も担わなければならない状況に立たされています。つまり、企業の中核を担う世代が、長時間労働が不可能な状況になっているのです。にもかかわらず、長時間労働を前提としたマネジメントを続けていれば、彼らは仕事を続けることすら難しい状況に追い込まれてしまうでしょう。

 すでに、この危機は顕在化しています。
 ある大手商社が社内調査をしたところ、社員の18%が「主たる介護者」で、そのうち8割は男性だということが明らかになりました。「主たる介護者」というのは、その社員自らが主な介護の担い手だということです。そのような社員が18%もいるのです。家族内に介護が必要な人がいるけれど、妻が中心に介護をしているというケースも含めると、さらに介護者の割合は上がるはずです。

 しかも、今後、団塊世代が一斉に70代後半に入っていくわけですから、この数字が激増するのは間違いありません。一刻も早く、長時間労働を前提としたマネジメントをやめて、時短勤務・在宅勤務など多様な「働き方」を許容しつつ、高い生産性を上げるマネジメントに切り替えなければ、確実に企業経営は困難な状況に直面してしまうでしょう。まさに、「働き方改革」は、日本企業にとって死活問題なのです。

 そこで、私がマネジャーの皆さんにご提案したいのは、人事部などと相談して、社員の介護状況や今後の見込みなどを調査したうえで、これまでお伝えしたような問題意識・危機感をトップ層に伝えることです。

 いわば、トップ層を怖がらせるわけですが、同時にあなたが現場で実践した「働き方改革」の成果を示せば、「解決策があるなら」と、きっとトップ層の気持ちは動きます。すでに「働き方改革」の実証実験が社内ですんでいるわけですから、トップも安心して全社に号令をかけることができるわけです。