2019年4月に罰則つき残業規制がスタートすることもあり、「働き方改革」は喫緊の課題となっている。そんななか、プレッシャーが増しているのがプレイングマネジャー。個人目標とチーム目標を課せられるうえに、上層部からは「残業削減」を求められ、現場からは「仕事は増えてるのに…」と反発を受ける。そこで、1000社を超える企業で「残業削減」「残業ゼロ」を実現してきた小室淑恵さんに『プレイングマネジャー 「残業ゼロ」の仕事術』をまとめていただいた。本連載では、本書のなかから、プレイングマネジャーが、自分もチームも疲弊せずに成果をあげるノウハウをお伝えしていく。
ハイパフォーマーの「秘訣」を探る
チームの「働き方改革」をすすめる際に、注意していただきたいことがあります。
ついついマネジャーは、チームの業績を上げるために、ハイパフォーマーを重用しがちですが、これだけではチームの生産性には限界があります。いえ、むしろ長期的にはマイナスの効果を生むでしょう。重用されない他のメンバーは確実にモチベーションを落としますし、ハイパフォーマーが過重労働に陥り”燃え尽きる”かもしれません。ハイパフォーマーに頼るチームマネジメントは、極めてリスクが高いのです。
それよりも、一見遠回りのように見えますが、ハイパフォーマーの「ノウハウ」をチーム全体に広めて、メンバー全員の底上げを図ることこそが、生産性を最大化するベストの方法なのです。
では、そのためにはどうすればよいか?
「働き方改革」を進めるためには、メンバー全員が「どの仕事」に「どのくらいの時間」を使っているかを客観的に把握する必要がありますが、ここにヒントが隠されています。一人ひとりのメンバーが、どのように働いているのかを比較していただきたいのです。もちろん、比較して優劣をつけるためではありません。比較することで、ハイパフォーマーの特質を把握するとともに、その特質を他のメンバーに伝播させる方法を考えるためです。
たとえば、下図のように「営業」「会議」「資料作成」などの項目ごとに、「Aさん」「Bさん」「Cさん」がどのように時間を使っているかを可視化します。そして、ハイパフォーマーの仕事のやり方とローパフォーマーの仕事のやり方を比較すると、いろいろなことが見えてくるのです。
たとえば、「ハイパフォーマーのAさんは営業に30%の時間を割いている」「Bさんは営業に40%の時間を割いているがローパフォーマー」「最もパフォーマンスの低いCさんは営業に10%の時間しか使えていない」という状況がわかったとします。
ここから、どんなことが見えてくるでしょうか?
まず第一に、最もパフォーマンスの低いCさんが10%しか営業に時間を使えていないことから、パフォーマンスを上げるためには、営業に割く時間を一定程度確保しなければならないことが推測できます。
一方、Cさんが営業資料作成に30%もの時間を使っているのに、ハイパフォーマーのAさんは営業資料作成に10%しか使っていません。であれば、Aさんの営業資料作成のノウハウをCさんに伝授すれば、Cさんの営業資料作成が短時間で完了するようになって、営業に使える時間を大幅に増やせるかもしれません。
第二に、40%もの時間を営業に使っているBさんが、営業資料作成に5%の時間しか使っていないことに着目します。Bさんがローパフォーマーにとどまっているのは、ここに原因があるのかもしれません。つまり、営業資料の精度が低いために成約率が低いのかもしれないと推測できるわけです。
このように、ハイパフォーマーとローパフォーマーを分析することによって、パフォーマンスのカギを握るのは、「営業の時間を確保すること」「営業資料の精度を上げること」の2点だという仮説を立てることができるわけです。