伊藤忠商事は近年、ファミリーマートやデサントなどグループ企業への経営関与を強める動きを加速させている。その先に見据えるのは、膨大な消費者データの掌握。情報を武器に、中国巨大市場への攻め手を緩めることもない。近江商人の血脈を持つ関西系商社は、どこへ向かおうとしているのか。
(聞き手/ダイヤモンド編集部 重石岳史)
――2019年3月期の評価はいかがでしょう。
連結純利益約5000億円のうち、まず金属・エネルギー分野は約1100億円。オーストラリアやアゼルバイジャンで優良な権益を持っているので、ここの部分はきちんと維持し、できるならば少しずつ拡大していく。
資源は価格によってブレる。うちが非資源を重視するのはそこにあるのですが、さりとて1100億円は大きな利益の塊で、これがなければ5000億円を維持できない。
基礎産業の分野では一番大きいのが機械、次に化学品、鉄鋼製品。ここは商社に昔からある、いわゆるトレードビジネスです。ここの部分もちゃんと成長していかなきゃいけない。
ただし効率が悪くなったりピークアウトしたりした事業が結構あり、やはり資源と同様に資産として入れ替えていく。場合によっては売却し、成長が見込まれる新しい会社に入れ替えていくべき分野です。モビリティや新電力など産業構造の変化に従い、機械カンパニーはそちらにシフトしていかなければいけない。
――子会社化したファミリーマートの見通しは。
ファミマはGMS(総合スーパー)を切り離し、これからコンビニ事業に集中できるようになったわけです。GMSのユニーは、ドン・キホーテさんがこれから自分たちの事業と併せて大きくしてくれる。
GMSは元々、商事会社では(再建は)難しいだろうと判断をしていたところ、最終的にドンキさんという良いパートナーができた。なので、われわれとしてはコンビニ事業に集中することになったわけだけど、残念ながらコンビニの店舗数はこれから増えてはいかない。飽和状態だろうと皆がみている。
なおかつドラッグストアが出てきたり、米アマゾンが生鮮事業に進出したりと、いろいろなことが起きています。24時間営業の問題も含めて、新しい課題が出てきている。これをどう解決していくかは結構重たいんだけれど、そこはやはり、店舗の効率化や省力化をどう図っていくかということだと思う。
それからファミマには1日当たり1500万人のお客さんが来るわけだから、このデータをどう活用して事業を拡大していくかということになる。商品開発の役に立つだろうし、金融や保険などいろんな付帯的なサービスをコンビニに来るお客さんに提供し、収益のベースを上げていくしかない。